お気に入りの作務衣(さむえ)姿で楽しそうに取材を受ける米国生まれのテリー・ギリアム監督(74)を報道で目にした読者も多いだろう。それもそのはず、次々と野心作を発表し時代をリードしてきたギリアム監督は大の親日家であり、来日の度に訪れるのが「比叡山」と即答するほどの入れ込みようなのだ。
カオスの社会
根底には「日本の神秘な部分に対するあこがれや畏怖」があるそうで、ギリアム監督は具体例に「大都会とうまく共存している自然や神社仏閣の姿」を挙げた。だから日本の若者たちが“わが物顔”で行き交う東京・渋谷や秋葉原といった「カオス」を想起させる忙(せわ)しない街は苦手のようで、「頭がクラクラするからね」と、苦笑いを浮かべながら理解を求めた。だが、そんなギリアム監督の新作SF「ゼロの未来」の舞台がそんなカオスにのみ込まれた社会だというのだから、これまた興味深い。