だが、21日に現地で初公開された時から「ディーパン」は「砂のような描写」(米紙USATODAY)や「説得力のない結末」(米ハリウッド業界紙デーリー・バラエティー)と指摘され、批評家やメディアの評価は低かった。その作品が24日に最高賞に選ばれると、欧米の主要メディアは一様に「予想外」と報じ、デーリー・バラエティーは会場の反応を「世界中から集まった記者団から、驚きとともにブーイングと不快感と拍手が送られた」と冷ややかに伝えた。
逆に批評家やメディアが高く評価していたのは1950年代のニューヨークを舞台にした女性の同性愛を描く「キャロル」(トッド・ヘインズ監督)だった。豪女優、ケイト・ブランシェットさん(46)と米女優、ルーニー・マーラーさん(30)による実力派著名女優のダブル主演で、同性愛という時代を象徴するテーマを描き、話題性は十分だった。
しかし、9人の審査員を束ねる審査員長のジョエル監督(60)とイーサン監督(57)のコーエン兄弟は、授賞式後、審査員を務めたメキシコのギジェルモ・デル・トーロ監督(50)や米俳優、ジェイク・ギレンホールさん(34)らとともに記者会見し、「審査員全員、これが素晴らしい作品だと思った」と述べ、全員一致で「ディーパン」を選んだと明言。審査員たちは口々に、難民という時事問題に絡んだメッセージよりも、作品全体が持つ力強さで選んだと説明した。