ド素人の政治家がこねくり回す「リスク逓減策」に自衛官は不安を抱く。対策は自衛官に任せ、勲章制度の無礼を正せば自衛隊の士気は一層上がる。そも政治家に指摘されずとも、自衛官にリスクが伴う現実を子供ですら知っている。イラクに赴いた親しきT一等陸佐は派遣前の04年、小学3年生の長男と幼稚園の次男を正座させ諭した。
「イラクで困っている人を助けに行く。火事場に行く消防士さんと同じ。お母さんを助け、しっかり家を守りなさい」
不安を口にする留守家族ばかり紹介するメディア報道に接し、イラクが危険だと感じ取っていた次男は大泣きしたが、長男は気丈にも唇を噛み締めた。が、帰国したT氏と防衛庁(当時)内で半年ぶりに面会し、号泣したのは長男の方であった。「お父さん、ボク、本当に大変だったんだから…」と言うや、T氏の胸に飛び込んだ。
長男は父の教えを守り抜き、弟を悲しませまいと、寂しさと不安で押し潰されそうになる心のリスクと闘った。一方、精神的にも物理的にも、安全保障上のリスクと直接闘(戦)わぬ野党政治家が仮想する「リスク逓減」は政治の道具に過ぎず、主張を入れればむしろ作戦・活動の柔軟性を奪う。政治家は自身が発する浅知恵が生む自衛官のリスクを自覚していない。(政治部専門委員 野口裕之(のぐち・ひろゆき)/SANKEI EXPRESS)