ロシアは、クリミアを国際法規範に反して、ウクライナから分離させ、自国に併合した。また、ウクライナ東部のドネツク州、ルガンスク州では、ロシアと提携する親露派武装勢力が権力を奪取し、事実上のロシアの「保護国」を形成している。日本としては、このようなロシアの国際秩序を混乱させる行為を黙認するような行動を取ってはならない。
しかし、それ故にウクライナのポロシェンコ政権を支持するということにはならない。米国は、ロシアのプーチン政権に対する忌避反応から、ウクライナに対して過剰な肩入れを行っている。ウクライナの現政権は、ネオナチ勢力を含んでいる。さらにポロシェンコ大統領は、ロシアとの紛争を先鋭化させ、欧米諸国、とりわけ米国の支援を受ける環境を整えることによって権力基盤の強化を図っている。今回のサーカシビリ氏のオデッサ州知事の任命も、その一環だ。
北方領土交渉の妨げ
日本は、ロシアとウクライナの間で行われている不毛な争いから、できる限り距離を置くべきだ。安倍晋三首相のウクライナ訪問とウクライナへの経済支援などという戦略を考えた外務官僚は間が抜けている。こういう余計な外交活動をすることによって、北方領土交渉は、一層困難になる。どうも外務省には包括的外交戦略がないようだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)