日本国益かなう対中協力
かつて、中央アジア東部と新疆ウイグル自治区は、「東トルキスタン」と呼ばれていた。一時期、新疆ウイグル自治区には「東トルキスタン共和国」という国家が建設されたこともあった。新疆ウイグル自治区に対する中国政府の民族政策、宗教政策は成功しておらず、住民の離反を招いている。このような状況で新疆ウイグル自治区に「第二イスラム国」が誕生する可能性が十分あると筆者は懸念している。
中国は南シナ海、東シナ海で挑発活動を繰り返しているが、中国の安全保障にとって、中央アジアとの西部国境地帯で危機が迫っていることに対する認識が弱いように思える。日本は、中国と、新疆ウイグル自治区、中央アジアを横断する「第二イスラム国」形成の危険性について、戦略対話を行うことが重要と思う。西部国境方面におけるイスラム原理主義過激派の台頭を阻止することで中国と協力することは、日本の国益にもかなう。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)