そんな油井さんが宇宙に興味を持ったのは少年のころ。生まれ育ったのは星空の美しい長野県川上村。姉2人の3人きょうだいで、父、●(=ごんべんに甫)司さん(78)は「レタス農家の跡継ぎができた」とかわいがった。「3人でよく農作業を手伝った」。姉の関口夏美さん(53)は振り返る。
油井さんは父の農作業を毎日手伝い、小学3年生のころ天体望遠鏡を買ってもらうと、人家の明かりが届かないレタス畑で深夜まで1人、望遠鏡をのぞき続けた。●(=ごんべんに甫)司さんは迎えに行き、誘われるまま望遠鏡をのぞいた。「土星にピントを合わせ、ずっと待っていた。きれいに輪が見えた」と懐かしんだ。こうした日々が忍耐強さや集中力を育んだ。
さらに農作業では、1日にレタス200箱超を出荷する両親のもと、段ボール箱を組み立て、収穫する父の手元に差し出した。手際が悪いと叱られるため、両親の動きを見て効率的な手順を考えた。先輩飛行士の若田光一さんは、油井さんを「優先順位を把握しながら作業する能力が高い」と評価する。
「次は船長狙える」
その後、経済的な理由で防衛大学校に進み、航空自衛隊に。米空軍のパイロット養成施設で、テストパイロットが有人宇宙開発を先導した米映画「ライトスタッフ」を見て感激し、操縦技術を磨いた。