2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について、安倍晋三首相が7月17日、建設計画の白紙撤回を表明した。政府が責任を持って新たな計画を策定するとし、国際オリンピック委員会(IOC)もこれを了承。「皆さんに祝福される大会」(安倍首相)へ、新たなスタートを切った。
出直しの決断自体は評価できる。しかし、どうしても「遅すぎる」との思いがぬぐえない。最終的に2520億円まで膨れあがった総工費には、早くから批判が集まっていた。決断のタイミングは、いくらでもあったからだ。
白紙撤回すれば招致時の国際公約に違反するだの、19年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)に間に合わないだの、何かと理由をつけて抵抗する人たちがいた。いざ撤回を決めたらどうか。7月29日にクアラルンプールで開かれたIOC理事会で「公約違反」を問う声はほとんど上がらず、バッハ会長に至っては「変更は当然あるべきこと」と述べた。ラグビーW杯も結局犠牲となった。いったい何を恐れていたのかと思う。