もっと早く決断していれば、すでに契約したデザインや設計などの費用約59億円の大半が無駄になることはなかった。ラグビーW杯にも間に合わせることができたかもしれない。大会組織委員会の森喜朗会長は7月、産経新聞のインタビューに旧計画の維持を「メンツの問題」と語ったが、そのために多くの金と時間が奪われた。にもかかわらず、政治家も役人も建築家も、誰も自ら責任を取ろうとしない。新国立競技場をめぐる混乱は、金や時間だけでなく、何より国民から東京五輪・パラリンピックに対する“熱”をも奪い去った気がしてならない。
新計画の策定にあたり、政府はこれまで置き去りにされていた感のあるスポーツ界の声を積極的に聞き始めた。また、インターネットを利用したパブリックコメント(意見公募)も実施する方向で検討に入った。
金や時間と違い、祝祭への“熱”は取り戻すことができる。開幕まで5年。アスリートや国民の声を聴こうとする姿勢が政権維持のための点数稼ぎに終わるのではなく、新たなスポーツの「聖地」に反映されることを願ってやまない。(森本利優/SANKEI EXPRESS)