全国高校野球選手権神奈川県大会の2回戦。試合前にシートノックをする横浜高校の渡辺元智(もとのり)監督=2015年7月14日、神奈川県平塚市のバッティングパレス相石スタジアムひらつか(矢島康弘撮影)【拡大】
試合後、東海大相模の門馬敬治(もんま・けいじ)監督(45)がベンチ裏の部屋に渡辺監督を訪れた。笑顔があふれ出し、固い握手を交わした姿はまるで高校球児のようにさわやかに映った。
卒業していく部員には「人生の勝利者たれ」という言葉を送る。野球から離れて社会に出ても充実した人生を歩んでほしいという願いが込められる。
実は記者は、神奈川の私立高校時代、野球部に所属する高校球児だった。そのころの渡辺監督は常に厳しい表情で細かい指示を矢継ぎ早に出し、強い口調で決して妥協を許さない、とても怖くて近寄りがたい存在だった。しかし、取材を通して接した監督は、厳しさは変わりないのだろうが時折笑顔を見せる温和な印象だった。当時の姿からは想像できない。ただ昔も今もその言葉には説得力があり、胸に響く。「人格者」といわれ、OBのみならず多くの人々から慕われるゆえんだろう。