五輪3連覇で獲得した金メダルの前で、引退記者会見する柔道男子の野村忠宏さん=2015年8月31日午後、大阪市(共同)【拡大】
五輪の柔道男子60キロ級で3連覇の実績を持つ野村忠宏さんが31日、大阪市内で引退会見を行った。2008年北京五輪代表選考で落選し、連覇が断たれた後は、けがとの闘いだった。12年ロンドン五輪出場もかなわなかったが、40歳までの現役生活を全うした。
野村さんは、度重なるけがで体がぼろぼろになりながらも現役にこだわった。五輪3連覇の偉業を達成しても満たされない柔道への思い。肉体は衰え、世界の舞台は遠のいたが「苦しいものと向き合うほど柔道が特別な存在になっていった」と心境の変化を語る。自分への挑戦が命題だった。
手術を重ねた選手生活後半を「つらく、きつかった」と述懐した。ロンドン五輪を目指した時期は「現役を続けることに罪悪感を持った」こともあったという。
負傷と敗北を繰り返してたどり着いたのは「金メダルが柔道家としてのゴールではなかった」という境地。自分を育ててくれた競技ととことん向き合おうと決め、有望な若手との対戦を目標にして稽古に励んだ。
引退の記者会見では「心の限界はないと感じた」と口にした。未練はないと言い切ったが、故障がなければやめてはいないとも。「柔道が大好き。心の中の深いところにあるのは柔道への愛」と語った希代の選手の幕引きは見る側にも寂しさを感じさせた。(SANKEI EXPRESS)