では、そのように思い入れの強い人物であるストックを演じるパティンソンにはどんな演出をしたのだろう。「まずは彼は実力派の俳優です。ただ、彼は私の映画で俳優としての才能を世の中に示さなければなりませんでした。理由は、彼が(スターダムに押し上げた映画である)『トワイライト・サーガ』シリーズへの出演によって、役者としての成功をいとも簡単に手にしてしまったからです」。コービン監督はパティンソンに自らの置かれた現状を冷静に把握させたうえで、演技ではストックとの共通点をしっかりと意識させた。
「ストックもカメラマンとしての才能を世の中に証明しようと必死でした。つまり、パティンソンとストックは同じ境遇にあり、似たような魅力を持っていたのです。そういう意味でも、パティンソンは適役といえるでしょう」
本作は、カメラマンやジャーナリストを志す者にとっても示唆に富むもので、魅力的な取材対象とどのように関係を構築していくかを学ぶことができる。「大切なのは魅力的な被写体に接近し、家族のような関係を築くことです。そうすれば他のカメラマンはその被写体にアクセスできないようになり、自分だけがライバルたちの誰にもまねできないようなユニークな写真を撮ることが可能となるのです」。12月19日から東京・シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)