そこへ出入りを自由に許されたボロフォは、7年もの時間をかけてケリーバッグや馬具、香水など、メゾンのものづくり現場をドキュメントしたのである。普段は絶対に開示しない鞄の型紙や職人たちが作業をする手元に肉薄する写真。それらは、工房の秘密をのぞき見するユニークさに加え、鍛えられた技巧の美しさと崇高さを表現し、各界から評価された。そして、そんな『La Maison』のなかでも最も異色で熱を帯びた写真が、超高級車ブガッティ・バイロンの内装をエルメスが手がけた際の仕事現場だったのだ。
もともと好きだった車の写真を撮って、ボロフォの好奇心に火がついた。以来、ご乱心というか趣味全開というか、とにかく彼は車関連の写真集を立て続けに刊行する。ブガッティのヴィンテージカーを整備する技術者の手や、エンジンのパーツをひたすら撮った『VROOM! VROOM!』。そして、イギリス随一の職人たちが働くといわれるロールスロイスの工場を撮った『ROLLS-ROYCE MOTOR CARS』。今までとはまったく異なる感性で撮られたこれらの作品は、カーフォトグラフィーの新しい地平といっても過言でない。