監督は「トレインスポッティング」(1996年)、「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)のダニー・ボイル(59)。脚本は「ソーシャル・ネットワーク」(10年)、「マネーボール」(11年)のアーロン・ソーキン(54)。
ボイルはこれまでのテンポのいいカメラワーク、カット割りをあえて封印することで、登場人物の内面に踏み入る覚悟が見受けられ、人間の機微を描写することにたけたソーキンは、まさに真骨頂のでき映え。最強タッグの誕生ですな。そして、この切り口で脚本にGOサインを出したプロデューサー陣の勇気も、ここで称(たた)えておきたいと思います。
存在を忘れたら成功
キャスト陣の演技も秀逸でございました。ジョブズ役のマイケル・ファスベンダー(38)も、ジョブズを陰で支えるジョアンナ役のケイト・ウィンスレット(40)も、余計な芝居を一切していない。役者の心理として、頭で分かっていてもやりたくなっちゃうものなんですよね。「ここは俺の見せ場だから!」的な想(おも)いが、ついつい演技を過剰なモノにしてしまう。