【試乗インプレ】卓越した美的センスが光るボルボ・V90 クロスカントリー(後編)
今年2月に発売されたボルボの「V90 クロスカントリー」は、多用性に優れるエステートのV90をリフトアップして走破性を高めた高級クロスオーバー。前編では走行性能や安全装備を試したが、今回は内外装や使い勝手、総評をお伝えする。矢継ぎ早にラインアップを入れ替えて攻勢をかける新世代ボルボの快進撃に、ドイツ御三家もうかうかしていられない!?(文・大竹信生/SankeiBiz 写真・瀧誠四郎)
エステートといえばボルボ
ボルボはエステート作りにおける練達の士だ。その歴史は初代「デュエット」が登場した60年以上も前に始まり、20年ほど前に初のクロスカントリー「XC70」を発表した。安全性の追求を基本理念にユーティリティや走破性能も磨き、北欧発の高級車として独自の世界観を作り上げることで、アウトドアを楽しむ人々を中心に多くのファンを獲得してきた。
V90 クロスカントリーは、XC70の後を継ぐプレミアム・クロスオーバー。全長4940ミリ×全幅1905ミリ×全高1545ミリという、ボルボのフラッグシップ「90シリーズ」にふさわしい堂々たるボディサイズを誇る。
このクルマの最大の魅力はズバリ、「デザインの美しさ」にある。SUVテイストの強いクルマは「武骨」「マッチョ」といった独特のイメージが付きやすいが、V90は誰がどこから見てもスタイリッシュで、「美しい」「カッコいい」「流麗」といった褒め言葉が非常にしっくりくる。その華麗な外観デザインに大きく貢献しているのが、昨年発売された本格SUV「XC90」から始まった新世代ボルボデザインの導入だ。中でも北欧神話の雷神が持つ「トールハンマー」をモチーフにしたLEDヘッドランプは、新世代ボルボを象徴するスウェーデンらしいアイコン。マイナーチェンジしたコンパクトハッチバックの「V40」や新型セダンの「S90」はもちろん、V90 クロスカントリーにも取り込んでいる。ハンマー型のLEDランプを点灯させると、まるで氷塊から削り出したかのように鮮やかなアイスホワイト色に輝く。手で触れたらひんやりとしそうだ。ボルボのアイデンティティを継承する縦長のリヤコンビランプも「I字型」から「L字型」にすることで、ややマンネリ気味だったリヤビューに新鮮な風を吹き込んだ。
悪路での走行も想定したV90は、飛び石からボディ下部を守るスキッドプレート付きバンパーや、タイヤハウスを縁取るフェンダーエクステンションといったクロスカントリー専用パーツを装着している。過度にオフロード色の強いパーツで装飾すると、正統派から外れた「異端児」のように浮いた存在になりそうだが、このクルマはSUVらしさを主張しすぎないところにデザインの秀逸さを強く感じさせる。これら専用パーツの機能性を維持しつつ、エレガントな新世代デザインにすんなりと溶け込ませることで「美しい」「優雅」といった美的要素と、悪路も苦にしない「たくましさ」や「機能性」を巧みに融合させている。これなら大都会を走ったり高級ホテルに乗り付けても、ミスマッチと思われることはないはずだ。
これぞ本物のラグジュアリー
インテリアは高級感で満ち溢れている。ダッシュボードやシートには高級ナッパレザーとブラックウォールナット(くるみ)のウッドパネルをふんだんに使用し、ドアハンドルやスピーカーカバーにはアルミニウムを使っている。触れたときの感触や質感は、明らかに「レザー風」「木目調」「メッキ」とは違う柔らかさや重厚感がある。世の中にはちょっと背伸びした高級車が多いが、これが本物のラグジュアリーの本質だ。
インパネには12.3インチのデジタル液晶ディスプレイを搭載。スピードメーターとタコメーターの2つの計器もデジタル表示で、その間のスペースにはアウディやVWのようにナビゲーション画面を表示させることも可能。これはセンターコンソールの9インチモニターを見るよりも走行中の視線移動が少なく済み、使いやすくて何よりも安全だ。
ダッシュボード周辺はボタンだらけのV40やV60とは一変、スイッチ類を大幅に省いてシンプルに仕立てており、ほとんどの操作はモニター上で行える。エアコンの吹き出し口の形状など、インテリアの様々なパーツデザインや配置も、旧デザインのV40やV60よりも大幅に洗練されている。全体的にまとまりがあり、ぬくもりを感じる上品な空間だ。
シートは前編で指摘した通り、もう少し肉厚にしてほしい。ともにヘルニア持ちの筆者と瀧カメラマンが口をそろえて「長時間乗ると疲れてくる」と不満を漏らしたのだから、改善の余地があるのは間違いない。これはおそらくシート形状の問題よりも、クッションの薄さにあると感じた。試乗後、ボルボの担当者に正直に伝えたところ、「今回から全く新しいシートを導入しました」とのことだった。ボルボのことだから、これからユーザーの声に真摯に耳を傾けながら改善を図るのは間違いないだろう。もし走行中に疲れを感じ始めたら、マッサージ機能を使うとコリが和らぐはずだ。気休め以上の効果があることは実際に2人で確認できた。
試乗車は「Bowers&Wilkins」の高級オーディオシステムを搭載していたので、車内に置いてあったボルボ・セレクションのCDを聴いてみた。サブウーファーを載せている割には重低音の存在感が薄いと感じたが、逆に高音は歯切れのよいクリスプな音を聞かせてくれた。
オプションのパノラマ・ガラス・サンルーフは強くお勧めしたい。ガラス面積は非常に大きく切り取ってあり、頭上に広がる大きな空に女性や子供が喜びそう。これなら車内の明るさや開放感が格段に上がるうえ、何よりも大自然の中できれいな空気を取り込みながら走るのはとっても気持ちがよかった。チルトアップやプルバックなど多彩なアレンジが利くのもうれしい。
車高は高く、全高は低く
210ミリという最低地上高を確保しながら、全高は多くの立体駐車場に対応する1545ミリに抑えている。そこで気になるのが居住性だ。ルーフラインがなだらかに下がる後席のヘッドクリアランスは、身長172センチの筆者が座ったときに拳が2つ入るほどの余裕がある。ホイールベースが長いので、レッグスペースはとにかく広い。「車高は高く、全高は低く」を、車内スペースを犠牲にすることなく実現したのは「グッジョブ!」だ。
荷室はサイドから見ると斜めにカットされているため、開口部付近の高さにはやや難がある。その代わりに奥行きがあり、分割可倒式シートは背もたれのレバー、もしくはラゲージルーム側面のボタンを押すだけで簡単に倒すことが可能。シートをフルフラットにすれば大人2人が横になることもできるので、ちょっとしたアウトドアで重宝しそうだ。レジ袋などを固定するストラップ付のボードやフックがあるのもうれしい。
新世代デザインで“弱点”を克服
完全に個人的な意見だが、ボルボはこれまで、なんとなく価格相応の高級感が伴わないイメージだった。それは昨年試乗したV60でも感じていた。それが、新世代ボルボの投入によって内外装のデザイン性と高級感を飛躍的に向上させ、ラグジュアリー感で見劣りするという弱点を見事に克服したのだ。今までメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家ばかりに目が行きがちだったユーザーがボルボに振り向き始めたのなら、まさに“してやったり”ではないだろうか。実際に最近のボルボは好調で、「販売台数は右肩上がりです」(ボルボ広報部)とのこと。2016年度の新車販売台数における前年度比の伸び率を見てみると、ボルボはドイツ御三家を上回っている(※日本自動車輸入組合の統計より)。
V90 クロスカントリーはSUVに乗っていることを感じさせない高級車でありながら、都会を出ればどこにでも踏み込んでいける高い走破性能も併せ持つプレミアム・クロスオーバー。ボルボはV60 クロスカントリーを投入したときから『都会、ときどき自然』というフレーズを使っているが、V90はまさに最上級のラグジュアリー空間をどんなフィールドにも持ち込める究極のオールラウンダーだ。
V90は5人乗りだが、もし3列シートが欲しければXC90という選択肢もある。他にもV40やV60など、ユーザーのライフステージや家族構成、用途に合わせて幅広いラインアップがあるのも魅力的。3月のジュネーブモーターショーでは時期型XC60がベールを脱ぎ、これまたデザインのカッコよさが大きな話題となった。当然、V40やV60もモデルチェンジを控えているはず。今後のボルボの動向からますます目が離せなくなってきた。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
■主なスペック ボルボV90 クロスカントリー T5 AWD Summum(試乗車)
全長×全幅×全高:4940×1905×1545ミリ
ホイールベース:2940ミリ
車両重量:1870キロ(サンルーフ装着車のため20キロ増)
エンジン:水冷直列4気筒DOHCターボ
総排気量:2.0リットル
最高出力:187kW(254ps)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500~4800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
タイヤサイズ:235/50R19
定員:5名
燃料タンク容量:60リットル
燃料消費率(JC08モード):12.9キロ/リットル
ステアリング:右
車両本体価格:754万円(税込)
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