それと、地面に対して水平に見えるルーフ。その、ホットプレートの蓋をかぶせたような、古いワーゲンバスにも似た独特の意匠を際立たせているのはサイドウインドウ前上部の形状だ。写真で一目瞭然、ここがはっきりと「角」になっている。こんな窓を持ったクルマは昨今ほとんど見ない。この角は同時に、切り立ったフロントウインドウを強調する役割も持っている。
加えて、フロントウインドウの湾曲が強めなのも、他のクルマと一線を画すレトロな雰囲気を醸し出す。
これらデザイン上の特徴は、派生車種の増えたBMWのミニシリーズのほとんどの車種に共通しており、どれを見ても、ミニっぽさを損なわず、それでいて各車種の個性もしっかり感じられる形になっている。
そんなBMWミニシリーズの中にあって、クラブマンの特徴は、ホイールベースを延ばした長めの全長と、観音開きのバックドアの2点。全長が長くなったことで、やんちゃなイメージのあるミニに落ち着いた大人の雰囲気がプラスされ、前回書いたように走りの穏やかさにもつながっている。観音開きのバックドアは、ただでさえレトロ感溢れる外観をさらに古風に見せており、ひょっとすると、現行のミニシリーズの中で最もオリジナルミニの風情を体現しているモデルかもしれない。
試乗車はメルティングシルバーというガンメタリック風の渋いボディカラーだったが、クラブマンにはこういう落ち着いた色がよく似合う。個人的には、メーカーがイメージカラーとして設定している、えんじ色系統のピュアバーガンディがクルマの持つイメージに一番マッチしていると感じた。
アクセルペダルまで丸い!徹底された円のモチーフ
内装に目を移していくと、キャビン内のあらゆるパーツが可能な限り円、または楕円形で造形されていることに気付く。この円形へのこだわりは徹底されていて、空調吹き出し口や各種プッシュボタン類、シフトレバーの握りなどに留まらず、液晶ディスプレイの外枠やドアノブ、アクセルペダルに至るまで、そこまでやるかと呆れるほどに、どこもかしこも丸い。さすがに液晶画面自体は四角だろうと思ったが、よく見ると、左右が円形にトリミングされている!