ここまでくると完全に機能性を通り越して、デザインのためのデザインになっている。と書くと、過剰で無駄、と思われるかもしれないが、さにあらず。ここからが面白い。これだけ徹底されていると、機能的に必要かどうかという価値判断はどこかに飛んでしまって、その世界観に圧倒されてしまうのである。もちろん必要最低限の機能性はきっちりクリアしているから、「こんな形にしたら使いにくいじゃないか」という不満は出てこない。
形は丸いが、スピリットは尖っている
想像だけれど、ミニのある生活を始めたら、身の回りのものを全部丸くしたくなってしまうような気がする。身に着けるものや身の回りのものの色や形状をコーディネートする、というのは、クルマを選ぶ感覚というよりはファッションを選ぶ感覚に近い。オーナーとなった者のワードローブを一新させてしまうほどの強烈な個性を放つ。BMWがミニで志向しているのは、そういうことではないか。当然好き嫌いはあるだろう。角張ってるほうが好き!という人には受けないし、クルマに実直さを求める人には無駄に高いクルマに映るはずだ。でも、それでいい。この形に込めたメッセージが届く人にこそ愛されたいし、乗る人の心をハッピーにしてあげたい。そんな作り手の思いを強く感じた。
007というよりサンダーバード
ミニの生まれ故郷は英国である。BMWはドイツのメーカーだが、オリジナルミニに敬意を表して、ユニオンジャック塗装のルーフをオプションで選べるようにするなど、英国由来のクルマであることを前面に出してプロモーションしている。
ここで連想ゲームを少し。英国と言ってまっ先に思い浮かぶのは、007(私だけ?)。007と言えばボンドカーだ。オースチン・ローバー時代のモデルも含めて、今までミニがボンドカーに選ばれたことはないが、現行ミニの運転席に座っているとなぜか、ボンドカーのように秘密兵器を搭載した特注車両に乗っているような気分になる。その理由は、スイッチ類の形状にある。