デザイン優先だが、使い勝手も余裕で合格点
ここまで見てきたように、デザイン優先のクルマではあるものの、使い勝手はけっして悪くない。ホイールベース延長によって、後席にも大人が余裕を持って座れる広さが確保されているし、荷室も意外なほど広くフラットで、詳しくは写真をご覧いただきたいが、床下収納の蓋の構造などから実用性を真面目に煮詰めていることがうかがえる。前席にはBMW譲りの座面長調節機構を装備、アクセルペダルは操縦性を重視したオルガン式を採用…と突出して使いやすいということころまではいかないまでも、各部のユーザビリティーは非常に水準が高く、フォルクスワーゲン・ゴルフ、アウディ・A3、メルセデスベンツ・Aクラス等、他社のライバルと比較しても引けをとることはない。
優劣をつけるものではないが、1点だけライバルと比べて特徴的なのは、外観の件でも触れたフロントウインドウの角度だ。窓が立っているから、前席に座った時の圧迫感が少ない。運転しているドライバーにはそれほど気にならないかもしれないが、助手席に座る人には、この圧迫感の少なさは好感を持って受け入れられるはずだ。
気に入ったら買うしかないクルマ
動力性能、使い勝手はいい意味で無難。必要以上に性能を盛っていないけれど、期待を裏切ることはない。いじわるな見方をすれば、同クラスの輸入車の中で飛び抜けた存在ではない。同価格帯のルノー・メガーヌRSなどと比べてしまうと、歴然と見劣りしてしまってお得感はない。ミニシリーズの強みは、やはり内外装のデザインが醸し出す、唯一無二の世界観だと思う。もしデザインが気に入ってしまったら、他のクルマは自ずと選択肢から外れ、もう買うしかなくなる。造形という点でミニの代わりが務まるクルマはないのだから。(文・カメラ 小島純一)