220人の部下を率いる中佐殿
大谷さんは大日本帝國海軍では中佐に相当し、火砲やミサイル、短魚雷で武装する基準排水量3500トンの護衛艦《やまぎり》の艦長として、220人の乗組員を率いる。艦橋では「指定席」でにらみをきかせ、艦長室には風呂・トイレが付く。
防衛大学校(横須賀市)の40期、分かりやすく表現すれば「女性1期生」に当たる。当初は、一般大学の文学部に入学し、考古学者を目指した。が、テレビでたまたま見た湾岸戦争で、防大進学を決意。2年生のときに中退して、「女性らしく育ってほしい」と望んだ両親の反対を押し切り防大に進んだ。なぜか-。
「親のスネをかじっての大学生活は一人暮らしで楽しく、ぬるま湯。でも、テレビの向こうでは戦争という別世界だった。こんなことで良いのかと、衝撃を受けた。以前より、国に奉仕する仕事をしたかったのは確かだが、湾岸戦争の映像で愛国心を覚えた」
母性本能が国家を守る
《やまぎり》における指揮統率方針は《一源三流》。方針には、母であり、妻でもある女性艦長のパイオニアとしての努力が透ける。意訳すると-。
一、国家を守るために血を流す。
二、家族のために汗を流す。
三、部下・同僚のために涙を流す。