新車で買える量産FFの中で最強のエンジン
すっかり前置きが長くなったが、そんな欧州Cセグの底力をこれでもかと見せつけられたのが今回試乗した308 GTiだった。
GTiは、ベース車両の308にプジョーのピュアスポーツモデル、RCZ R譲りのターボ付き1.6リッター直列4気筒エンジンを6速のマニュアルミッションと組み合わせ、専用にチューニングしたサスペンションと扁平率35の極太タイヤを履かせたホットハッチだ。パワーとトルクは270馬力、33.7kgf・mと、とても1.6リッターエンジンとは思えないスペック。
市販されている現行の前輪駆動車(FF)の中ではすでに完売したホンダ・シビック タイプRの310馬力に次ぐ性能である。つまり、いま新車で買える量産FFの中で最高出力のエンジンなのだ。この下には、いずれも265馬力を発生するエンジンを搭載したルノー・メガーヌ RSとVW・ゴルフ GTI クラブスポートが存在するが、この2台は一回り大きい2リッターエンジン。1.7リッターのエンジンを積むライバル、240馬力のアルファロメオ・ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデとは30馬力もの差をつけており、気筒当たり、あるいはリッターあたりの馬力でも圧倒的な数値と言える。では、その走りから見ていこう。
パワー=正義を実感 扱いやすく、普段使いが楽しい
マニュアルミッションながら、低回転からトルクがたっぷりあり、ごく軽くアクセルを踏んでスッとクラッチをつないでやれば、難なく走り出す。クラッチがつながるタイミングも程良く、思いがけず空吹かしになったり、突然つながってギクシャクしたりするようなこともない。これならエンストの心配はないだろう。
ドライブモードはノーマルとスポール(スポートのフランス語読み)の2段階。プッシュスタートボタン横の「SPORT」ボタン長押しで、メーター表示が真っ赤に変わり、アクセルレスポンスとターボの過給圧が上がって、トルクも増幅されるが、街乗りならノーマルモードで十分以上。意識して少し強めにアクセルを踏むだけで、バックミラーに映った後続車がみるみる小さくなっていく。まったく気負うことなく車列の流れをリードできる。1.3トンの車重を単に動かすだけなら、270馬力、33.7kgf・mは明らかにオーバースペックだけれど、結果的に街乗りでの加速・巡行時の余裕を生んでもいるわけで、やはり「パワーは正義だ」と思わされる。