相模湖で道路脇の未舗装路に入ってみたが、200ミリの車高に加えてアプローチアングル(クルマを横から見たときに、前輪の接地点とフロントバンパーの最前端部分を直線で結んだラインが作る地面からの角度)が大きいため、道路から一段盛り上がったオフロードに乗り上げる際にフロント下部を地面にこする心配は全くない。ごつごつとした石が落ちていても、車体の腹に当たるようなことは一切なかった。
富士五湖の湖畔でも、土と砂利が混じったサーフェースで走ってみた。デコボコした箇所もあるが、着座位置が高いので周囲の状況を把握しやすい。水辺は倒木や礫石(れきいし)といった障害物がその辺に転がっているが、ボトムが高いので引っかけることはほとんどないだろう。車高が200ミリもあれば、険しい山にでも入らない限り安心して走ることができる。ちなみにこれまで試乗インプレで紹介してきたSUVの最低地上高を見てみると、BMW X1=185ミリ、ベンツGLC=180ミリ、三菱アウトランダーPHEV=190ミリ、レクサスRX=200ミリといった感じ。こう比較してみると、いかにV60 クロスカントリーの車高が見た目以上に高いかが分かる。オフロード走破性の高さを決める要素はいくつかあるが、その中でも車高の高さはとても強力な武器となる。
低速域で生きてくる極太トルク
湖畔から県道に上がる土の斜面は、クルマの出入りが多いこともあって轍ができるなどかなり荒れていたが、ここで威力を発揮したのが強力トルクを誇るディーゼルエンジンだった。オフロードは地面のぬかるみや凹凸、障害物や傾斜があるため、速度を10~20キロ程度まで落として走る場面が多い。エンジン回転数が落ちると出力が低下するため、トルクが小さいと悪路でアクセルを踏んでもなかなか進んでくれない。だからといって一気に踏み込めば、急発進してヒヤッと…なんてことになりかねない。今回の斜面も、上がった先の県道が下から見えないので、突然発進すると非常に危険。その点、ボルボのディーゼルは低回転域のトルクが太いので、タイヤがくぼみや石につかえても、ちょっとアクセルを踏むだけで軽々と障害物を乗り越える力がある。低速度域におけるドライバーのアクセル感覚と、その時に予測したクルマの動きにズレがないことは、オフロードを安全に気持ちよく走るうえで非常に大切なことだ。
V60 クロスカントリーで一つ残念なのは、ディーゼル車にAWD(全輪駆動システム)の設定がないことだ。車高の高さはもちろん、四輪駆動も走破性を飛躍的に高める絶対的アイテム。試乗車はFF(前輪駆動)ということもあり、グラベルでやや滑る時があった。普段から筆者が乗り慣れているAWDのレガシィ アウトバックは、悪路でも四輪のトルクとグリップが効いていて信頼感がとても高い。今後、V60 クロスカントリーのディーゼル車にも四駆の設定が追加されることをぜひ期待したい。