試乗インプレで私が担当した車種としてはマツダ・ロードスター以来の自然吸気エンジン。リニアに出力が上がっていくのが、実に気持ちいい。信号待ちで先頭になった際、ちょっと強めに踏み込んでみると、2速のままあっという間に一般道の法定速度に達してしまう。無論、同じ排気量であれば実際の加速はやはりターボ付きのもののほうが速いだろうが、パワーが手の内にある感触が心地よく、これならターボなしで正解だと思える。
回り方もとても滑らかで、直列4気筒と、直列6気筒の中間のようなフィーリング。雑味がなく、精密感、上質感が非常に高い。さすが長年スバル・インプレッサで揉まれ熟成してきたエンジンがベースになっているだけのことはある。このエンジンを味わうためだけに乗るのもアリだ。
4000回転を超えたあたりから、「クォーン」と乾いたエンジン音がキャビンの中にも響いて、これまたたまらない。
意外!乗り心地は乗用車レベル
専用設計の6速ミッションは、シフトチェンジがガッキンガッキン決まって剛性感が非常に高く、エンジンと並んで精密感がビシビシ伝わってくるが、ロードスターやスズキ・アルト ワークスのミッションに比べると感触は今一歩。あの軽く押してやるとヌルッと吸い込まれていく感じに乏しいのが惜しいところ。
乗り心地についてはスポーツカーということであまり期待していなかったのだが、なかなかどうしてこれが悪くない。さすがに高級車並みとはいかないが、わざと荒れた路面を乗り越えても、突き上げはマイルドだし、細かい凹凸ならほとんど吸収してしまい、振動やタイヤからのロードノイズも抑えられている。これなら普段使いの乗用車として十分通用する。
86をファミリーカー候補として家族会議にかけても、机上で話しているだけでは承認を得られにくいと思うが、うまく口説いて一緒に試乗してもらえれば見方が変わるかもしれない。