トヨタ博物館は動態保存が特徴の一つだったが、産技館では動態展示物が多いのが特徴。織機や大型の製造機械がダイナミックに動く様子を間近で見ることができるほか、展示物によっては、実際に手で触れて動かすことができるものもある。
展示棟は大きく「繊維機械」「自動車館」に分かれており、今回は「試乗インプレ」の一環としての取材だったため、自動車関連展示に絞った記事だが、実は織機関連展示も充実している。環状織機(レプリカ)の動態展示だけ見させてもらったのだけれど、静かに回転しながら粛々と生地を織るそのさまに息をのんだ。およそ製造機械のイメージの対極を行くその動きの美しさと作動音の静かさに、発明家・技術者としての佐吉翁の理想が凝縮されているように思えたからだ。
前置きが長くなった。そろそろ本題の自動車館に移ろう。ここから展示テーマごとに見どころ所を紹介していく。
等身大ジオラマでタイムスリップ~創業期~
自動車部としてスタートする以前の準備期までさかのぼって、自動車館の展示が始まる。米国製の自転車用小型エンジンの分析と評価から着手された創業のための準備は、材料研究、エンジンやボディーの開発、試作へと進んでいく。
当時の様子は等身大のジオラマで再現されている。等身大フィギュアがあえて無彩色なのも、かえってリアルに感じられ、トヨタ自動車の創業期をモデルにしたテレビドラマ「LEADERS リーダーズ」(2014年・TBS)で描かれた場面にタイムスリップして、自分が立ち会っているような不思議な感覚に陥る。
注釈先読みで理解が深まる~仕組みと構成部品~
お次は自動車の基本的な仕組みを理解するための展示。普段乗っているクルマが、どんな部品で構成されているのか。それぞれはどのように動き、どんな働きをするのかを手で動かせる展示を交えながら、まさに一目瞭然で知ることができる。
現代の自動車は、機械部分がボディーやカバーに覆われており、普通に乗っているだけではその仕組みを目で見て知る機会はない(教習所で習ったがもう忘れている)から、ここでしっかり仕組みと部品について学んでおけば、この後の展示を見る際にもより深く理解することができるというわけだ。読書でたとえると、本編を読む前に注釈に目を通しておくような感じ、とでも言おうか。