圧倒的な解放感
甲板を屋根で覆わないオープンデッキの魅力は何といっても、海風を直接肌で感じられるスピード感だ。この日は最高で33ノット(約65キロ/h)まで加速。走航中は風音やエンジン音に遮られて会話もままならないが、同船者たちの満面の笑みと全身を使ったジェスチャーを見るだけで、各々が感じている高揚感は自然と伝わってくる。
筆者も思わず「めちゃくちゃ楽しい!」と大きな声を出してしまったが、それも一瞬で掻き消されてしまった。風を直接感じ取るだけで、いま自分が体験しているアクティビティに対する関与度合いは一気に深みを増す。それは、例えば船内から窓越しに景色を眺めるのと、体いっぱいに風を浴びながらスピードを体感するのでは、ボート遊びに対する没入感が劇的に変わってくるということ。いままさにどっぷりとハマっている状態だ。その代償として髪型は壊滅的に乱れ、波しぶきを浴びたりもするが、これもマリンレジャーの一部であり醍醐味なのだ。
気品に満ちたラグジュアリー
速度を落として楽しむクルージングもこれまた贅沢。スピード走航時の“暴風”から一転、心地よい風を感じながら見渡す限りの水平線を眺めていると、心が完全にリフレッシュされる。地上とはまた違ったリラックスタイムはまるで時間が止まったかのような静寂に包まれ、実に長閑だ。
「外もいいけど、ちょっと中で休みたいかな…」というときは、キャビンでまったりと過ごすのもいい。階段を下りた先には、間接照明に照らされたブラックガラスのフローリングと大きなU字型ソファ。乗船前は豪華絢爛なインテリアを想像していたのだが、実際は過度に飾らず落ち着きのある「和風」の空間に仕立ててあり、全体的に「品のある洗練されたラグジュアリー」という印象を受けた。大型スクリーンやマーク・レビンソンの高級オーディオ、木材をふんだんに使ったWC兼シャワールームも完備。採光用の天窓も取り付けてある。船内から外を眺めることはできないが、前方のハッチを開けて顔を出すことは可能だ。