VWらしい高水準の乗り味だが…
市街地を走って体感できる走行性能は、2リッター版ゴルフやパサートの延長線上であり、想定の範囲内で正直驚きはない。
無論、恐ろしく高いボディー剛性と直進安定性、減衰力を自在にアレンジできるダンパー、ATの滑らかさとMTのダイレクト感を両立する熟成のデュアルクラッチ変速DSG…と快適かつ運転が楽しくなるVWらしさは健在だ。
1.7トンを超える車重を感じさせない軽快な加速と高級車らしい重厚感が同居する乗り味もいかにもVWと言える。しかも四輪駆動だから、走る場所を選ばない柔軟性も備わる。
ただ1点、路面状況が悪くなるとロードノイズが多めに入ってくるのは残念だ。
5ドアという構造上キャビンと荷室間に隔壁がないこと、サッシレスドアで遮音性を高めにくいこと、35扁平の幅広タイヤを装着していることなど、ロードノイズに関して不利な条件が重なっているからと思われる。
外観からの期待が大きかったせいもあるが、やはりここにもゴルフ、パサートと比較したときのもう2段くらい上のクラス感が欲しい。
そもそも走りの質感は、すでに2つ格下のゴルフの水準でほぼ高級車レベルなので合格ラインはクリアしているわけだが、価格差分ほどの違いは感じられず、走りを楽しむという点ではゴルフやパサートで十分かなとも思えてしまう。
松・竹・梅で竹を選ぶ日本人の心理を突いた?
ここまで、ベースとなったパサートとの比較で見てきたが、価格差を考えると私ならパサートを選ぶことになると思う。
色気は少ないが、パサートのスクエアなデザインも別の意味でクールだし、内外装のデザインコンセプトに筋が通っていて、乗っていても降りて眺めても納得がいく。
動力性能的にもFFで十分、なんなら1.4リッター仕様でもいい。と言うか気筒休止システムの付いた1.4リッターエンジンの先進性のほうがむしろVWらしい気がする。燃費はいいし、何と言ってもベースグレード(気筒休止機構はつかない)は300万円台前半の値付けだ。
パサートばかり持ち上げてしまったけれど、四輪駆動が必要ならアルテオン一択となる。FFしかないパサートの2リッター版最上位モデルとの40万の価格差を許容できるなら悪くない選択かもしれない。
他社ライバルの価格設定は、BMWの4シリーズグランクーペの四駆仕様が633万円から、アウディ・A5スポーツバックのクワトロ(四駆)は686万円からとやはりお高い。それぞれアルテオンとの価格差は約90万円と140万円で、お得感では圧倒的にアルテオンに分があるし、BMWもアウディもVWに比べてオプションの単価が高めに設定されているので、最終的な支払額ではもっと差が開く。
しかしライバルにはブランド力の強さに加え、BMWはミッションが8速、アウディは内装の質感が数段上と高いなりの理由もあって、なかなか悩ましい。
また、既存VW車とプレミアムブランドの隙間を狙う絶妙な価格設定、と見ることもできる。松・竹・梅と並べられると竹を選びがちな日本人の心理を狙っているのかもしれない。
お得感と外観デザインの魅力で、どこまでライバルの牙城を崩せるか、要注目である。▼【試乗インプレ】のアーカイブはこちらから