コンビニやスーパー 原発周辺商業施設の整備進む 住民帰還を後押し

 
東京電力福島第1原発敷地内にある作業員の大型休憩施設にオープンしたローソンの店内。食料品や日用品が並ぶ=1日

【東日本大震災5年】

 東京電力福島第1原発の周辺で、商業施設の整備が徐々に進んでいる。住民帰還への後押しが期待されるほか、事故処理の円滑化にも寄与しそうだ。

 作業員の利便性向上

 福島原発敷地内にある作業員の大型休憩施設(福島県大熊町)に1日、大手コンビニエンスストアのローソンがオープンした。店舗名は東電福島大型休憩所店。施設2階の約60平方メートルで、日曜を除き、午前6時から午後7時まで営業する。即席麺や飲み物、タオルなどの日用品計約1000品目をそろえ、作業員の利便性向上を目指す。

 酒類や店内で調理が必要な揚げ物、おでんは提供しない。

 第1原発では1日約7000人の作業員が働いている。同日の開所式で第1原発の小野明所長は「作業環境の改善を図ってきた。大事に使っていきたい」と述べた。

 セブン-イレブン・ジャパンは同県富岡町に、福島第1原発事故の避難指示区域内としては3店目の店舗を31日に開く。福島第1原発から半径20キロ圏内にあり、除染作業など復興に携わる人や一時帰宅する地域住民の需要に応える。

 店名は「セブン-イレブン福島富岡上郡山店」で、午前6時から午後8時まで営業する。おにぎりや弁当、カップ麺、日用雑貨など、通常の店舗と同程度の約2800点をそろえる。

 富岡町は、原発事故後に警戒区域に指定され、2013年3月以降、避難指示区域を3つの区域に見直した。東電福島第2原発もある。

 このうち居住制限、避難指示解除準備の両区域は、住民が自宅で宿泊することは特別期間を除き原則禁止されているが、日中のみ自由に立ち入ることができる。新店舗は、避難指示解除準備区域にオープンする。

 セブン-イレブンは13年8月に同県楢葉町で、当時、避難指示解除準備区域だった地域(現在は解除)に、避難指示区域として初めての店舗を開いた。昨年7月には、同県飯舘村の居住制限区域に2店目を開店した。

 飯舘村出身で「セブン-イレブン飯舘村仮設店舗店」を経営する菅野賢さん(44)は「人がいなくなっても故郷の場所は変わらない。コンビニが必要だという人のためにやれることをやっていきたい」と話している。

 買い出し不要に

 福島第1原発から20~30キロ圏内の同県広野町には5日、公設民営の複合商業施設「ひろのてらす」がオープン。同日の開業を祝う式典で遠藤智町長は「地域住民の大きな希望となるよう願っている」とあいさつした。

 近くに住む看護師の宍戸由香さん(35)は「これまでは週に1回、近隣の街まで買い出しに行っていた。すぐに立ち寄れるのでうれしい」と話した。

 メーンテナントのスーパー「イオン広野店」は、売り場面積が全国の約500店舗で最も小さい約500平方メートル。生鮮食料品や日用品をそろえ、店舗にない商品は店内でインターネットを活用して取り寄せできる。

 施設にはスーパーのほか、地元のクリーニング店や飲食店などが入る。

 広野町は原発事故で一時、緊急時避難準備区域になった。11年9月の解除後、町に戻った町民は半数ほどにとどまっている。