都道府県別の上昇率 住宅地は復興需要が続き福島1位、宮城2位 

公示地価
住みたい街として人気が高まる武蔵小杉で、住友不動産が販売する超高層マンション「シティタワー武蔵小杉」=川崎市中原区(伴龍二撮影)

 22日発表された平成28年公示地価によると、東日本大震災からの復興需要が続き、福島、宮城両県の住宅地は都道府県別の上昇率で2年連続の全国1位、2位だった。東北地方(6県に新潟県を含む)全体でも0・1%上昇、18年ぶりにプラスとなった。一方、災害公営住宅の整備などが進んだことで一部地域で過熱していた移転需要が一服し、地価上昇が県内外に波及する現象もみられた。

 住宅地は福島県が前年と変わらず2・9%上昇で3年連続のプラスとなった。ただ、震災や東京電力福島第1原発事故による被災者の移転需要が落ち着き、全体的には上昇率の縮小傾向がみられた。

 特に原発事故で多くの避難者が移住したいわき市は前年、全国の住宅地の上昇率で上位10地点を独占したが、今年は2地点が8、10位に入るにとどまった。市全体の上昇率も6・7%(前年7・3%)とやや鈍化した。

 それに代わり、地価上昇は大玉村(5・1%)、南相馬市(4・9%)、福島市(3・4%)など県内各地に波及。大玉村は「環境面で故郷に似ている」という被災者が多く、住宅地の取引件数が急増。農地を転用しての宅地分譲が目立った。

 また、宮城県の住宅地は1・9%の上昇(前年は2・3%上昇)。一時は沿岸部で10%を超える上昇率を記録した石巻市の住宅地は0・7%の上昇(前年は1・5%)にとどまった。

 一方、仙台市のベッドタウンで福島県からの移住者も多いとみられる名取市では昨年と同じ2・2%の上昇となり、上昇傾向が続いている。

 不動産鑑定士の鈴木禎(よし)夫(お)氏は「震災から5年が経過して被災者による不動産の取引は落ち着き、地価上昇率は小幅になるのではないか」と予測している。