中国、狙いは欧州経済だけじゃない…ギリシャ・ピレウス港「獲得」、ちらつく海軍拠点化の野望

 
中国海運最大手が経営権を握るギリシャ・ピレウス港の第2埠頭=2012年5月(宮下日出男撮影)

 【ベルリン=宮下日出男、北京=矢板明夫】ギリシャは8日、同国最大の港であるピレウス港の売却契約について、中国海運最大手の中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)と正式に調印した。ピレウス港は地中海の海運の要衝で、アジア・中東地域から欧州への玄関口にあたり、今後、中国の欧州進出に拍車がかかる可能性がある。

 コスコ・グループは中国政府の管理下にある国有企業で、今回の買収は習近平指導部が主導する形で進められた。現地からの報道では、中国側はピレウス港を運営する国営会社の株式の67%を2段階に分け、計3億6850万ユーロ(約450億円)で取得する。

 中国側はこのほか港湾整備・開発に3億5千万ユーロを投資する予定。当初は株式51%分の取得にとどめ、これらの投資の実行を受け5年後に残りの株式を買い取る。中国はすでにピレウス港のコンテナ埠頭(ふとう)の運営権を握っていた。

 ギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の支援を受けて財政再建中で、同港などの国有資産の民営化は支援実行の条件。当初は民営化に反対したチプラス政権も現在は推進姿勢に転じている。首相府付近ではこの日、民営化反対のデモも行われた。

 習指導部は現在、中国を起点に内陸と沿岸の2つのルートでインフラ建設を通じて欧州まで経済圏を構築する「新シルクロード(一帯一路)構想」を推進している。ピレウス港の取得は構想実現の鍵を握るといわれており、将来は中国海軍が欧州に進出する際の拠点として利用することも視野に入れているという。

 中国はアジア回帰を強める米国へ対抗するため、欧州とアフリカでの経済的、軍事的影響力の拡大を急いでいる。中東欧やアフリカ諸国でもさらなる港湾などインフラの買収を検討しているほか、セルビア-ハンガリー間の鉄道建設計画も進めている。

 中国の外交関係者は「今回の買収は中国とギリシャの双方にプラスだ。中国企業がピレウス港をうまく運営できれば、ほかの港を買収する際の抵抗が少なくなる」と話している。

【用語解説】ピレウス港

 ギリシャの首都アテネ近郊に位置する、地中海沿岸で最大規模の港の一つ。運営会社によると、2013年の年間の利用旅客数は約1700万人、コンテナ埠頭での取扱貨物量は約64万TEU(1TEUは長さ20フィートのコンテナ1個)。