比大統領選 選挙向け政策で成長停滞懸念 全候補者「新税不要」
フィリピンは、5月9日の大統領選に向けて選挙運動が終盤を迎えるなか、経済課題の一つとされる歳入増をめぐる候補者の主張に懸念の声が上がっている。増税による歳入増を否定する候補者らの主張に対し、選挙向けの大衆迎合的な政策が成長停滞につながる恐れがあるとする考えだ。現地経済紙ビジネス・ワールドなどが報じた。
同国の予算管理省は、インフラや社会保障といった社会整備をはじめ、フィリピンの将来的な成長を支えるためには歳出の大幅増が必要と指摘。「現状のままでは歳出増に備えるどころか、歳入の基盤が先細りしていく」として、新政権による改革が不可欠との認識を示した。
これに対し、有力候補の一人とされるグレース・ポー上院議員の陣営は「汚職を減らし、納税の順守推進と税の管理体制の強化で歳入は増える」として増税を否定。過激発言で注目を集めるロドリゴ・ドゥテルテ・ダバオ市長の陣営も「密輸や汚職、政府の無駄遣いを減らすなど、歳入増のためにできることはたくさんある」と訴えた。
さらに、ジェジョマル・ビナイ副大統領が各種優遇策の見直しと徴税効率の改善を主張したほか、アキノ大統領の後継指名を受けたマヌエル・ロハス前内務自治相も、徴税体制の見直しと好景気による雇用増で、税収は自然に増えるとの見方を示した。ほかの候補者を含め、全候補者がそろってひとまず新税導入は不要と判断した格好だ。
フロレンシオ・アバド予算管理相は、こうした各候補者の主張に対して「行政面で改善の余地はあり、新政権は必ずしも増税に踏み切る必要はない」と理解を示す一方で、「票目当ての大衆迎合的な政策争いになれば投資家の信頼を失う」とくぎを刺した。
また、経済を専門とする民間団体の研究者は、すでに多くの候補者が実現の難しい大衆迎合的な政策を打ち出していると指摘、例として所得減税の議論を挙げた。同研究者によると、所得減税には代わりの財源が必要だが、貧困層の負担増につながるとの研究結果が報告された付加価値税の税率引き上げを財源に主張する候補者がいるなど、国民に対して説得力のある議論が行われていない状況だという。
フィリピンはアキノ政権下で順調な経済成長を遂げた。しかし、歳入に関しては15年の実績が2兆1090億ペソ(約5兆194億円)で政府目標の92%にとどまる。なかでも、税収は内国歳入庁が目標の86%、関税局が同84%と低調だった。歳入増の具体策は、新政権にとって課題になるとみられている。(シンガポール支局)
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