「明日はわが身」ビビる韓国メーカー 九州の地震で部品供給網が寸断

 
スマホ市場で大きなシェアを持つサムスン。新製品の売れ行きは堅調だ(AP)

 熊本県を中心に九州で続発する地震にお隣、韓国が神経をとがらせている。地震でトヨタ自動車グループやソニーの関係部品工場などの操業に支障が出て、それが韓国メーカーの生産に影響を及ぼす恐れがあるからだ。

 自動車やスマートフォンの中核部品に日本製が使われることは多く、九州から起きた部品供給網(サプライチェーン)の寸断は、韓国でもひとごとでは済まされないようだ。

 「トヨタ・ショック」は経済統計を押し下げ

 いまなお、激しい揺れに襲われる熊本、大分両県は、自動車部品や半導体などの工場が多く立地する。精密機械に不可欠な水源が豊富なうえ、工場を建設する広い用地を確保しやすかったからだ。熊本地震が直撃したのは、まさに日本の部品製造業の集積地だったといえる。

 地震により、サプライチェーンが寸断。トヨタ自動車では、ドアやエンジンなどの部品を製造するグループのアイシン精機の子会社(熊本市)が被災。部品を調達していた国内ほとんどの車の組立ラインが一時、停止した。

 「今回の減産の影響は相応に大きい」。SMBC日興証券は4月18日のリポートでこう指摘した。トヨタの減産を5万台程度と仮定。全メーカーの国内生産台数は平成22年以降、4月は平均75万台程度なので、今回の減産はその約7%の規模に相当する。

 そのデータをもとにした試算では、輸送機械工業の生産を6ポイント程度押し下げ、鉱工業生産全体も1ポイント程度低下させるという。

 リポートでは、稼働停止期間の長期化、他業種への波及によっては「生産への悪影響はこれよりも大きくなる」と警戒した。

 日本のマクロ経済への打撃も無視できない状況にある被災。経済的な影響は、お隣の韓国に及びかねない。

 「アイシン製」韓国車にも

 九州は、地理的に韓国に近く、同国メディアは関心を持って報道した。

 韓国・聯合ニュースは、双竜自動車のスポーツ用多目的車(SUV)チボリにアイシン精機の自動変速機が使われているとし、「生産に支障が出るのではないか」との懸念の声を報じた。双竜は、愛知工場で生産された変速機の供給を受けているため、熊本工場の停止による影響はないとしている。

 しかし、熊本工場の操業停止が長期化すれば、他工場で代替生産する可能性もあり、日本の供給側の体制はなお不透明。地震に左右される状態は変わっていない。

 韓国GMもシボレーキャプティバにアイシン精機の変速機を搭載しているという。

 九州は「日本のシリコンバレー」

 「打撃が予想されるのが電子関連業界。九州は日本のシリコンバレーと呼ばれるほど半導体製造業が密集している」。こう伝えた朝鮮日報(日本語電子版)がとりわけ注目したのが、デジタルカメラの画像処理用半導体などを生産するソニーの動向だ。

 ソニーは、画像センサーで世界シェアのトップクラスにあり、スマートフォンに欠かせない部品を手掛けている。頻発する地震で、同社の画像処理用半導体を製造する熊本工場(菊陽町)が操業停止。長崎(諫早市)と大分(大分市)の両工場の製造ラインも一時、停止を余儀なくされた。

 同紙によると、米アップルのiPhoneだけでなく、サムスン電子のギャラクシーS7、LG電子のG5といった新型機種などにソニーのカメラ部品が使用されている。

 足元では、サムスン、LGとも部品調達先が複数あり、一定の在庫を確保しているため影響は顕在化していないが、ソニーの部品工場停止は「世界のスマートフォン製造に直接影響を与えるものとみられる」(朝鮮日報)と懸念する。

 同紙は、熊本工場の操業停止が続けば、サムスン、LGに余波が生じる恐れがあると指摘した。

 部品調達への不安、消えず

 サムスン電子の2016年1~3月期連結決算(暫定集計)は、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比で10・4%増の約6兆6千億ウォン(約6300億円)、売上高は4・0%増の約49兆ウォン。新型スマホのギャラクシーS7、S7エッジの販売の好調さが寄与した。LG電子も1~3月の営業利益は65・5%増の5052億ウォンと好決算をたたき出した。

 ただ、こうした好業績の背景には、「生産過程での部品在庫管理」(毎日経済新聞電子版)など緻密なコスト削減戦略がある。大量の部品在庫を抱えないスリムな生産体制を目指す中での、部品調達の不安は韓国メーカーにとって、経営上の大きなリスクになりかねない。