識者インタビュー 山崎達雄・前財務官「リスクの未然回避が責務」 早川英男・元日銀理事「財政出動、薄れる危機感」

伊勢志摩サミット
山崎達雄氏(中村智隆撮影)

 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が26日、三重県で開幕する。下振れリスクが残る世界経済のてこ入れに向けて、各国が財政政策や構造改革で協調姿勢をどこまで示せるかが大きな焦点となる。国際的な課税逃れ対策や為替の安定などもテーマだ。議論の見通しについて、前財務官の山崎達雄氏は「各国が今後の世界経済のリスク認識を共有し、回避につなげることが重要になる」と訴える。一方で、元日銀理事の早川英男氏は「一斉の財政出動が必要との危機感は薄れ、玉虫色の結論に終わりそうだ」と指摘する。

山崎達雄・前財務官

 --世界経済のてこ入れに向け、仙台市の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は財政、金融、構造改革を総動員することで一致した

 「サミットでは基本的に政策総動員で一致するだろう。ただ、中国の成長率低下や英国の欧州連合(EU)離脱問題などで世界経済はさらに鈍化する恐れがある。この認識を共有すれば、各国は好きなことをやるのではなく、求められる“使命”が方向付けられる形になる。共通認識が重要だ」

 --日本の使命は

 「日本は、デフレ脱却時に、その流れが失速しないよう、長期的な構造改革にも資するような財政政策が必要だと主張する可能性がある。そういったところを日本がリードしてやることになるだろう」

 --G7各国に求められるのは

 「今はリーマン・ショックやアジア通貨危機のような状況ではない。今回のサミットで重要なのは、危機を起こさないために何をするかだ。リスクを分析し、いざとなればすべての手段を使う。そうして危機を未然に防ぐことが、先進国のリーダーとしての責務だ」

 --「パナマ文書」を受け、課税逃れ対策も重要だ

 「課税逃れ対策は、経済協力開発機構(OECD)でずっと取り組んできて、国際的な合意がある。パナマ文書をきっかけに、合意に入っていなかった国も入ろうとしている。世界的に対応の機運が高まっており、一気に加速させるのがいい」

 --為替については

 「仙台会合では通貨安競争は避けるとか、過度な変動は望ましくないという共通認識はあったが、現状について突っ込んだ話はなかったととらえている。首脳同士が話し合うサミットは同じ認識にとどまり、踏み込むことはないだろう」(中村智隆)

早川英男・元日銀理事

 --伊勢志摩サミットへの期待は

 「玉虫色の結論しか出ないだろう。市場が大荒れした2~3カ月前であれば、財政出動の国際協調を演出し、消費税再増税の先送りを表明できるタイミングだったが、現段階では、各国が財政出動しなければならないという危機感はない」

 --為替をめぐる日米の不協和音は大きい

 「客観的にみて日本の主張には無理がある。(日米の物価から算出する)購買力平価は1ドル=100円ぐらい。これまで、日銀の大規模金融緩和による円安が批判されなかったのは、アベノミクス開始前の円相場が70~80円台と購買力平価からみれば過度の円高だったためだ。米国の6月利上げの可能性が取り沙汰される中、円高に歯止めが掛かりつつあるので、政府・日銀の為替介入は無理だろう」

 --円安・株高の効果が剥落し、日本はアベノミクスの成果を強調しにくい

 「『成功している』とは説明しづらい。米国からすれば、日銀の大規模緩和で3年間も円安だったのに、まだ円安に頼るのかという不満は根強い」

 --日銀による追加の金融緩和は許容されるか

 「米国も量的緩和でドル安を誘導したので、日銀を批判できない。ただ、米当局が『為替水準は秩序的』と唱える中、追加緩和をやっても円安に働くだろうか。マイナス金利政策についても国民の理解が得られておらず、深掘りしても効果は出にくいだろう」

 --打つ手はないか

 「日銀が金融機関への貸し出しにマイナス金利を適用する追加緩和であれば効果的だ。(日銀からお金を借りれば利息を受け取れるため)金融機関はやる気を損なわず、貸し出しを増やそうとする。物価が伸び悩む中、7月の参院選後が追加緩和のタイミングだろう」(藤原章裕)