景気腰折れは当面回避も 消費刺激策急務

消費増税再延期

 安倍晋三首相が消費税増税再延期の方針を固めたことで、低迷する個人消費がさらに冷え込み、景気が腰折れする不安は当面回避された。ただ、中国経済の失速を背景に金融市場が混乱するなど、日本経済を取り巻く環境は予断を許さない。政府は次の増税時期となる平成31年10月に向け、デフレ脱却の道筋を確実にし、不透明な環境下でも増税に耐えうる経済の体力作りを進めることが求められる。

 民間シンクタンクは、29年4月に予定されていた増税の延期により、28年度の実質国内総生産(GDP)成長率が従来予想より下方修正される一方、29年度は上方修正されるとみる。増税前の駆け込み需要が消えるが、増税後の反動減がなくなるからだ。

 大和総研は28年度は0・3ポイント押し下げられ、29年度は0・7ポイント押し上げられると試算。増税延期は「短期的には景気にプラス」(熊谷亮丸チーフエコノミスト)とする。

 足元では個人消費の低迷が予想以上に長引く。26年4月の消費税増税後、節約志向が強まった上、海外経済の減速で株安が進み「消費意欲が一段と冷えた」(内閣府幹部)からだ。

 海外などの動向が31年10月にどの程度好転しているか予測するのは難しい。市場では内需を強化し、外部環境に左右されない強固な経済を作って、増税に備えるべきだとの声が上がる。

 SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「企業の賃上げ」などにより、消費意欲の向上につなげるべきだと主張する。市場ではこのほか、成長戦略を進めて企業投資を拡大するほか、社会保障制度改革を通じて若者の将来不安をなくし、消費につなげるべきだなどの意見もある。

 国内経済に関しては、東京五輪前の特需への期待もある。ただ、プラス効果は現時点で正確に見通しにくい。経済の強化に失敗し再び増税延期に追い込まれる事態になれば、日本財政への信認も失われかねない。