景気テコ入れ策総動員 今秋補正 最大10兆円規模 

消費増税再延期正式表明

 安倍晋三首相は1日の記者会見で、今秋に総合的な経済対策を実施する考えを表明した。政府は対策を盛り込んだ平成28年度第2次補正予算案を参院選後の臨時国会に提出し、成立を目指す。歳出は5兆~10兆円規模で調整しており、消費税再増税の先送りと合わせ、政策を総動員して、景気の腰折れ回避に全力を尽くす。

 安倍首相は記者会見で「デフレからの脱出速度を上げていかないといけない」と話し、経済対策の必要性を強調した。

 5月26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍首相は需要を喚起する財政出動の重要性を強調。各国が世界経済の成長に向け、財政や構造改革など全ての政策を用いることで一致した。すでに熊本地震の復旧・復興に向けた28年度補正予算は成立しているが、安倍首相は“国際公約”を受け、切れ目のない財政出動に踏み切る。

 日本経済は消費税率8%への引き上げ以降、個人消費の回復が遅れている。経済対策には、リニア中央新幹線の計画前倒しなど公共事業に加え、生活必需品などの購入に充てられるプレミアム商品券の発行を盛り込む見通しだ。子育て支援などの「ニッポン1億総活躍プラン」の一部施策も先行して実施する。

 27年度補正予算では、低所得の高齢者に3万円を配布する臨時給付金がバラマキとの批判を浴びた。安倍首相は会見で「人工知能、ロボット、技術革新を日本から起こす経済対策を行う」と述べ、成長につながる投資を重視する考えを示した。

 2次補正の財源は、税収の上ぶれ分や前年度の剰余金などが選択肢になる。ただ、金利低下に伴う国債利払い費の減少分の一部は、28年度補正予算で使用した。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「確保できる財源は最大4・5兆円程度」と指摘する。与党内からは予算の上積みを求める声があがる可能性もある。政府は27年度補正予算で赤字国債を発行しなかったが、財政規律の維持が焦点になる。(田村龍彦)