バングラテロ 新興国の手本、投資鈍化も 社会不安、過激派増の悪循環恐れ

 

 バングラデシュの飲食店襲撃事件で、同国の政治・テロリスクが改めて浮き彫りになった。アパレル産業が急成長するバングラデシュで増加傾向にあった外国企業の投資の勢いが鈍るのは必至。経済停滞は失業の増加など社会不安につながり、過激派の温床となる悪循環に陥る恐れがある。

 世界銀行によると、かつて最貧国だったバングラデシュは2004年以降、成長率5%以上を達成。「新興国経済のお手本」(外交筋)と評された。原動力となったのが、輸出で世界一、二を争うアパレル産業の台頭だ。

 「ZARA」や「H&M」など世界的なアパレルブランドが調達先として現地企業との取引を拡大。それまで調達先としていた中国の労働者の賃金上昇なども要因だった。資源もなく国土も狭いが、労働集約型産業を土台に最貧国からの脱出に成功した。

 ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が創設した「マイクロファイナンス」の草分け的存在、グラミン銀行グループと提携する日本企業も多く「新興国市場開拓のモデルケースだ」(日系食品企業幹部)。

 ただ14年ごろから与野党の対立が激化。ハシナ政権が主導した独立時の戦争犯罪を裁く特別法廷が、イスラム政党「イスラム協会」の指導者らに次々と死刑判決を言い渡したことで、ゼネストや暴動が頻発。政情不安から治安は悪化傾向にあった。(ダッカ 共同)