経済対策、恩恵は広く薄く 家計重視も乏しいメリハリ

 

 政府は2日に閣議決定した経済対策で、低所得者への現金給付や年金受給資格が得られる期間の短縮などの消費喚起策を打ち出した。さらに安倍晋三政権の看板政策「1億総活躍社会」の実現に向け、保育・介護士の処遇改善や、返済する必要がない給付型奨学金の創設なども盛り込み、幅広い層に恩恵を行き渡らせたい考えだ。経済対策が実現すれば暮らしにどんな影響があるのかを探った。

 低所得者への給付対象は、住民税が非課税の約2200万人で、1万5000円が現金でもらえる。消費税増税の負担軽減のため年6000円を給付していた「簡素な給付措置」を引き継ぐ格好で、2年半分に当たる金額をまとめて支給することから消費増が期待できそうだ。

 年金保険料を支払った期間が足りずに年金をもらえない人を救済するため、年金受給資格が得られる期間を現行の25年から10年に短縮する。これにより計約64万人が新たに年金を受け取れる。ただ準備に時間がかかるため、支給開始時期は早くても来秋となる見通しだ。

 労使で折半する雇用保険料も軽減、働き手の負担を軽くして可処分所得を増やす考えだ。料率は現行の0.8%から0.6%に引き下げるとみられ、年収400万円の会社員の場合、保険料負担は年1万6000円から1万2000円となる。

 保育・介護の環境整備も積極的に進め、保育士は月2%相当、介護職員も平均月1万円賃上げする。施設運営費支援などを通じ、保育・介護とも50万人分の受け皿確保も急ぐ。子育てや介護で仕事をあきらめていた人の就職などを後押しする可能性がある。

 学生向けで返済不要の給付型奨学金は、「17年度予算編成過程で制度内容について結論を得て実現する」と明記した。就職できなかったり、就職しても給与が安くて返済できない人が増える中、経済事情に関係なく学べる環境を整える。

 構造改革にも取り組み、正社員と非正規労働者の賃金格差をなくす「同一労働同一賃金」実現のため、法改正の準備を進める。

 厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会は7月、16年度の地域別最低賃金を全国平均の時給で24円引き上げるよう求める目安を厚労相に答申した。

 だが、企業が払う人件費の総額が変わらなければ、格差解消のため正社員の給与が下がる恐れがあると指摘する声もある。

 今回の経済対策は家計重視の姿勢を打ち出したが、総花的でメリハリがないともいえる。事業規模28.1兆円のうちインフラ整備が10.7兆円を占めるが、暮らし向上に直結するような施策に振り向けられるのは3.5兆円にとどまり、実効性には疑問符も付く。