GDP押し上げ効果限定的 事業費28兆円、経済対策を閣議決定

 
会談に臨む日銀の黒田東彦総裁(左)と麻生太郎財務相=2日午後、東京都内のホテル

 政府がまとめた経済対策は、国と地方の直接の歳出(真水)が7兆5000億円にとどまり、国内総生産(GDP)の押し上げ効果は限定的との見方が強い。政府は2016、17年度で1.3%の押し上げ効果を見込むが、市場では「0%台前半にとどまる」との意見が有力だ。インフラ整備の効果を最大限に引き出すには、政策対応などを同時に進め、持続的で中長期的な成長を生み出す努力が求められる。

 石原伸晃経済再生担当相は2日の会見で、「経済対策の実施で当面の需要喚起だけでなく、民需主導の経済成長につなげたい」と述べた。

 政府の試算では、「真水」で賄うインフラ整備や現金給付などの支出効果を見込んでいる。日銀の黒田東彦総裁も同日、経済対策のGDP押し上げ効果が1.3~1.4%になるとの見方を示した。

 この試算について、市場からは「高く見積もりすぎだ」との声が上がる。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「真水の規模や、過去の給付金の実際の効果などを考えると、16、17年度にそれぞれ0.2%ずつ増える程度にとどまる」と指摘。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、16年度だけで0.4%とみる。

 「真水」が小さくなったのは財政再建との兼ね合いで歳出を抑えた側面があり、やむを得ない面がある。重要なのは、安倍晋三首相が経済対策のキーワードを「未来への投資」とする通り、中長期的な成長にどこまでつなげられるかだ。

 とくに事業規模の4割近くを占めるインフラ整備は、効果を計り「選択と集中」を進めなければ、無駄な箱物が積み上がりかねない。

 例えば、訪日外国人を呼び込むために港湾整備を進めるのなら、同時に査証(ビザ)発給の要件緩和を進めるなど、対策効果を最大限に発揮する環境整備を、平行して着実に進めることが重要だ。

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 麻生太郎財務相と日銀の黒田総裁は2日夕、東京都内で会談した。デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて意見を交換し、2013年1月に政府と日銀が交わした共同声明を基に緊密に連携していくことを再確認した。