三菱自の燃費不正問題、エコカー減税の土台揺らぐ 来年度改正で条件闘争展開も
三菱自動車の燃費不正問題の長期化で、燃費性能の正確さが前提となるエコカー減税制度の土台が揺らぐ恐れが出てきた。メーカーへの不信感を強める総務省や財務省は減税対象を絞り込む構えだが、業界の巻き返しは必至で、来年度の税制改正論議で攻防が激化しそうだ。
「広い意味でのコンプライアンス(法令順守)意識が希薄だった」。三菱自の益子修会長兼社長は8月30日夕、東京都内の本社で開いた会見で深々と頭を下げた。同月2日、燃費不正の報告書を国に提出した際には問題が一段落したとの認識を示したが、1カ月足らずで再び謝罪会見に追い込まれた。社内の測定で都合の良い値を抜き出していたことに関し、益子氏は「法令ぎりぎりの取り扱いは即刻やめる」と硬い表情で言明した。
「自動車メーカーとしての実力を疑わざるを得ない。どうしたら是正できるのか分からない」。独自にデータを測定した国土交通省の担当者もあきれ顔だ。三菱自系の販売会社幹部は「(軽自動車の販売を再開した)7月は前年並みに売れたが8月は厳しくなっていて、さらに減るかもしれない」と表情を曇らせた。
燃費不正問題で逆風が強まる中でも、業界団体の日本自動車工業会は、エコカー減税の存続など求める税制改正要望を出す方針だ。主要8社の7月の国内生産台数は前年同月比3.1%減と低迷が続き、減税制度の存続は業界の死活問題となっている。これに対し、自動車税などを所管する総務省の幹部は「いんちきな燃費の問題が解決していないのに、減税延長の話をするのはおかしくないか」と批判する。三菱自の問題ではエコカー減税の返納手続きを担う自治体の負担が増えているだけに、この幹部は「どれだけ迷惑を掛けているのか」と不満をぶちまけた。
環境性能に応じて税負担が軽くなるエコカー減税は、車の購入時などに払う自動車取得税や自動車重量税に加え、毎年支払う自動車税と軽自動車税にも同様の措置がある。期限切れなどで、来年度の税制改正ではこれらの税制すべてで見直しの是非が議論される。
総務省は、制度を延長する場合も燃費基準をより厳しくし、対象車種を絞り込む構えだ。自動車重量税を所管する財務省によると、昨年4~8月に販売された新車のうち同税の減免対象車は92%に上る。現在はさらに多いとみられ「(環境技術の向上を促す)政策目的を考えれば、平均的な燃費性能を上回る車に絞るべきだ」と同省幹部は指摘する。
ただ、昨年末の税制改正論議では、自動車税の減税延長をめぐる議論が最後までもつれた。燃費基準を厳しくしようとした総務省に業界が猛反発し、与党の税制調査会幹部の判断で従来基準を一部残すことで決着した。
関連産業の裾野が広く雇用も左右する自動車業界は「政治力が強い」(政府関係者)。景気悪化を懸念する経済産業省は、エコカー減税の存続と自動車税のさらなる軽減を要望するなど、政府内のねじれ現象もある。燃費以外に省エネの度合いを測る基準が見当たらないのも事実で、年末にかけての議論は、制度の大枠は維持しつつ、燃費基準と対象車種をめぐる条件闘争が展開されそうだ。
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