クリントン氏、TPP再交渉視野 流出メールで「本音」判明

米大統領選
11日、米南部フロリダ州で開かれた大統領選の民主党集会でクリントン候補(右)の応援に駆け付けたゴア元米副大統領(ゲッティ=共同)

 【ワシントン=小雲規生】米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏(68)が昨年10月の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意時に、大統領としてTPPを再交渉して実現させるシナリオを見据えていたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が11日に公表したメールで分かった。クリントン氏は大筋合意後の声明では再交渉に触れず、最近は大統領になってもTPPに反対すると強調しているが、「本音ではTPP実現を望んでいる」との観測が広がりそうだ。

 ウィキリークスが11日公表した、昨年10月6日付のクリントン陣営のメールには、前日のTPP大筋合意に関してスピーチライターが書いたクリントン氏の声明の草稿が含まれていた。

 草稿は、大筋合意を「支持できない」としつつ、「微妙な判断だ」とも強調。さらに、アジア太平洋地域の自由貿易協定は「実現可能で必要だ」とし、「私はオバマ政権の価値ある成果に基づき、高水準で全米国民のためになる協定を交渉する」としていた。

 しかし、昨年10月7日に発表された声明は、アジア太平洋での自由貿易協定の必要性に触れ、オバマ政権の努力に謝意を示しながらも再交渉には言及せず、大筋合意内容は支持できないと結論づけた。クリントン氏は当時、反TPPを旗印にするバーニー・サンダース上院議員(75)から民主党の候補指名争いで追い上げられており、反TPPを明確にする必要があったとみられる。

 クリントン氏はその後もTPPに否定的な立場を維持。今年8月には「今も反対だし、大統領選の後も反対する。大統領としても反対だ」と述べ、反TPPの姿勢を強めている。

 しかし、国務長官時代にTPPを推進したクリントン氏は今でもTPPに賛成だとの見方は根強い。

 米通商代表部(USTR)の元高官は、「クリントン氏はオバマ政権下で議会がTPPを批准し、自分は大統領としてTPP批准に関与しなくて済むのがベストだと考えている」と分析。仮にクリントン氏が大統領選で勝利し、議会がTPPを批准しないままオバマ氏の任期が終われば、「クリントン氏は12カ国全体ではなく、複数のグループ交渉を進めるかたちでの再交渉に入るだろう」と指摘している。

 ウィキリークスは今月7日から、サイバー攻撃で入手したメールを順次公開している。