黒田総裁、金利誘導には手応え 市場は副作用を懸念

 
会見中、水を飲む日銀の黒田東彦総裁=1日午後、東京・中央区の日銀本店(酒巻俊介撮影)

 日銀の黒田東彦総裁は1日の金融政策決定会合後の記者会見で、金融政策の重点を9月に「量」から「金利」にシフトしたことについて、「市場にスムーズに受け入れられ、(物価上昇目標)2%に向けて効果を発揮している」と述べ、手応えを強調した。長期金利を「ゼロ%程度」に誘導することなどを目標にした世界初の枠組みながら、日銀の思惑通りに安定的に金利が推移しているからだ。

 日銀は、低金利が続けば企業の設備投資や個人の消費が増え、景気の押し上げ効果が期待できると判断。一方で、下がりすぎた金利が金融機関に悪影響を及ぼしているとして政策変更に踏み切った。

 1日の国債市場も、長期金利の指標である新発10年債の終値利回りは前日と同じマイナス0.055%だった。日銀が9月に政策を変更して以降、長期金利はマイナス0.1~0%の範囲内で変動。黒田総裁は会見で「順調にきている」とも語った。

 だが、日銀の思惑通りに今後も推移するのは難しいとの声も根強い。明治安田生命の小玉祐一チーフエコノミストは「日銀は年80兆円をめどに国債を買い入れており、国債の流動性は低下する。今後の価格変動リスクは大きい」と指摘する。また、長期金利は上昇したとはいえ、マイナス圏に沈んだまま。金融機関の運用環境が改善されたとはいえない。

 物価目標が後ずれすればするほど、こうした副作用が目立つことになる。