九州電力川内原発1号機、原子炉起動 異論唱えなかった三反園知事は“まっとう” 反原発団体と組んだ代償も

 
記者団の取材に応じる鹿児島県の三反園訓知事=8日午後、鹿児島県庁

 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は8日夜、原子炉を起動し、営業運転再開に向けて作業が進んだ。三反園(みたぞの)訓(さとし)知事が今回、異論を唱えなかったことは、国のエネルギー政策への影響を鑑みれば、まっとうな対応だといえる。ただ、自民党県議団は知事の真意がつかめないとして、さらに一歩踏み込み、原発をベースロード電源と認めるよう迫った。(高瀬真由子)

 8日午前、川内原発前で、反原発団体のメンバー数十人が抗議行動を展開した。同じころ、三反園氏は県議会に臨んでいた。

 「一部の人の意見だけを聞くのではなく、いろいろな人と同じ、県民目線で行う」。一般質問で県政運営の姿勢を問われ、三反園氏はこう答えた。

 言葉通り、三反園氏は今回の起動に際して、一部の反原発派の意見だけを聞くことはなかった。

 三反園氏は知事選で反原発団体と政策協定を結んだ。当選直後は「脱原発派知事の誕生」といわれた。

 だが、三反園氏は今回の起動にあたって、「私に権限はない」と繰り返し、異論を挟むことはなかった。業を煮やした反原発派は県庁前に集まり、「公約を守って」と訴えた。

 川内1号機は10月6日に運転を停止した。九電は定期検査とともに、三反園氏が求める特別点検に取り組んだ。その結果、熊本地震による異常は、現時点までに確認されていない。地元や経済界からは、三反園氏に冷静な対応を求める声が上がった。

 さらに10月に行われた薩摩川内市長選では、原発稼働を容認する岩切秀雄氏が3選を果たした。11月の鹿児島市長選では、川内原発の稼働停止を訴えた候補者が敗れた。

 三反園氏はこうしたことを背景に、反原発派のプレッシャーに耐えたといえる。

追及続く

 川内1号機停止が、想定以上に続く事態は免れた。それでも県議会で、三反園氏への追及は収まらない。

 「職員のみなさんを見ていて、大変だなと思います。はっきりしない中で、われわれに知事の思いを伝えようと、本当に努力されています」

 鹿児島県議会の一般質問で8日、自民党の鶴薗真佐彦議員が、三反園氏に語りかけた。「はっきりしない」とは、原発稼働に対する三反園氏の真意だ。

 三反園氏は10月、自民党議員に対し、原発について「自民党と方向性は同じ」と語ったという。

 その自民党や政府内の議論を経て、平成26年4月に国のエネルギー基本計画が閣議決定された。原発について、安価で昼夜を問わず一定の発電ができる「重要なベースロード電源」と位置付けた。将来の電源構成比率(エネルギーミックス)は、平成42年度に原発を20~22%とした。

 鶴薗氏は8日の議会で、「原発はベースロード電源と認めるか」と質問した。三反園氏は「計画においてベースロード電源として、原子力や水力などを位置づけていることは承知している」と答弁した。一方で、原発の位置付けに対する自身の考えは、明らかにしなかった。

 「ベースロード電源と認めないことに、会派内で反発の声が出ている」

 自民党県議団の堀之内芳平会長は憤った。

検討委は不透明

 三反園氏は、今議会で提案した補正予算案に、原発の安全性を検証する「原子力問題検討委員会(仮称)」の費用を盛り込んだ。設置には最大会派の自民党の賛成が不可欠だが、不透明な状況が続く。

 委員の名前を明らかにしていないからだ。

 三反園氏と政策協定を結んだ反原発団体は、10月6日付でメンバーの候補リストを県に提出した。そこには同団体のメンバーや原発に慎重な有識者が、ずらりと並ぶ。

 団体は「三反園氏は委員に反対派を入れると約束した」と主張する。これに三反園氏は「記憶には、定かでない」と議会で答弁した。

 こうした姿勢に反原発派は反発し、自民党側は不信感を募らせた。名前が公表されない以上、自民党は三反園氏の真意が極端な「反原発」にないか、見極めようとする。原発をベースロード電源と認めるかが判断基準となる。

 そもそも、三反園氏が「保守系無所属」をうたいながら、反原発団体と政策協定を結んだことが、一連の混乱を引き起こしている。幅広い県民の支持を得たいという考えだっただろうが、その代償が重くのしかかる。