カメラ、ラジカセ… アナログ人気、若者にじわり 「古さこそ斬新」

 
レンズ付きフィルムで撮影した写真を眺める北川拳汰さん=東京都目黒区

 写真はフィルムで、音楽はカセットテープ-。一定の年代以上には懐かしさを感じる「アナログ製品」の人気が、10~20代を中心にじわじわと広がる。関連イベントや販売店も盛況で、関係者は「デジタル慣れした若い人には斬新なモノであり、ファッションアイテムでもある」と話す。

 柔らかい雰囲気

 「粗さやピンぼけで柔らかい雰囲気とか温かみが出せる。人と違う表現ができるのが楽しい」。茨城県つくば市の大学4年、北川拳汰さん(22)は知人にすすめられ、昨年春ごろからレンズ付きフィルムで身近な人や風景を撮り始めた。

 写真はインターネットの会員制交流サイト(SNS)に投稿して友人と共有。撮り直しができず、フィルムを巻く手間もかかるが「そこが逆に新鮮」。現像するまで仕上がりが分からないわくわく感も魅力という。

 レンズ付きフィルム「写ルンです」が今年で発売30周年を迎える富士フイルムは、直営店での販売数が昨年の5倍以上。購入者の大半は10~20代の若い女性で、春に発売した限定モデル5万個も「予想を上回るペースで完売した」と担当者は驚く。

 家電収集家の松崎順一さん(56)が企画し、池袋パルコ(東京)で27日まで開催の「大ラジカセ展」は、1960~90年代のラジカセ100台超とカセットテープ500本が並ぶ。「若い頃を思い出した」という60代男性の一方、埼玉県東松山市の大学3年、藤原奈々さん(21)は、好きな洋楽ロックバンドがカセットテープで新譜を出したのをきっかけに来場。「こもった音に味がある。ラジカセのビンテージ感もかっこいい」

 HMVレコードショップ渋谷でも、レコード売上高が前年比で1.3倍に増えた。人気アーティスト、星野源や女性グループ「Perfume」がレコード盤を出した影響などで、20代以下は客層全体の3割。担当者は「グッズを手に入れる感覚でレコードを楽しんでいる。『どうやったらレコードを聴けるんですか』という問い合わせも増えた」と語る。

 人と差がつく表現法

 広告業のNTTアドは2月、アナログに対する印象について、首都圏1都3県と愛知県、大阪府に住む若年層(16~25歳)と壮年層(40代)を対象に男女各250人、計1000人を調査した。結果は、壮年層でアナログ消極派が51.4%で、積極派の48.6%を上回った。逆に、若年層では積極派が52.6%で、消極派の47.4%より高い割合になった。

 積極派の理由では、壮年層で「親しみやすい」「懐かしい」という回答が多かったが、若年層は「楽しい」「センスがよい」が上位。小林勝司編集長は「デジタルが当たり前の若い人は、アナログが古いとか煩雑という感覚はなく、新しいエンターテインメントと捉えている。同じ情報が誰でも簡単に手に入る中、人と差がつく自己表現手段にもなっている」と分析する。

 博報堂生活総合研究所の夏山明美上席研究員も「手間と時間をかけるアナログはデジタルにない手応えや安心感を得やすい。デジタルに取って代わられるのではなく、これからも共存していくだろう」と述べた。