米新議会がスタート トランプ氏就任で10年ぶり共和党主導権 オバマケア撤廃めざす

 
1月3日、米ワシントンで開会した第115議会で宣誓するライアン下院議長(UPI=共同)

 【ワシントン=小雲規生】米国の第115連邦議会が3日、開会した。20日のトランプ次期大統領(70)の就任後は、共和党が10年ぶりに大統領と上下両院の多数派を握ることになる。共和党は医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃や大幅な減税による経済の活性化などを目指すが、民主党からの反発は必至で、実現可能性には不透明さも残る。

 エンジ上院予算委員長(共和党)は3日、オバマケア廃止に向けた決議案を提出した。トランプ氏も3日、ツイッターへの投稿で「オバマケアは機能していないことを思い起こさねばならない」と述べ、オバマケアを廃止したうえで新たな医療保険制度を導入する考えを改めて示した。

 一方、下院はライアン下院議員(共和党)を議長として再任。ライアン氏は「みなさんは変革の風を感じることができるだろう」と述べ、共和党主導の政権運営で米国に変化をもたらすとの意欲を示した。

 共和党はこれまでもオバマケアが政府の財政負担や保険料の上昇をもたらしたと繰り返し批判し、2016年1月には廃止法案を上下両院で可決した。このときはオバマ大統領が拒否権を行使したが、トランプ氏が大統領に就任すれば廃止の現実味が増す。

 ただしオバマ政権はオバマケアで約2千万人が医療保険に加入できるようになったと主張しており、有権者の間ではオバマケアを廃止すれば、多くの米国民が医療保険を奪われてしまうとの懸念も大きい。共和党はオバマケア廃止には移行期間を設け、その間に新制度を導入する方向で検討しているが、新制度の内容をめぐってオバマケア存続を求める民主党との対立が激化することは必至だ。

 またトランプ氏が目指す所得税や法人税の減税の立法化についても、減税の対象に富裕層を含めることに否定的な民主党との相違は残る。3日に就任した民主党のシューマー上院院内総務は「トランプ氏が中間層にとって最善の政策を提案しない場合は、われわれは抵抗する」としており、トランプ氏の公約がすんなりと実現する公算は小さい。

 一方では、トランプ氏と共和党との足並みの乱れも出ている。下院共和党が2日に承認した議員の不正行為を調査する議会倫理局の権限を弱体化させる方針について、トランプ氏は3日、ツイッターで「もっと重要なことに集中しろ」と批判。下院共和党は3日、急遽撤回を決めた。

 米メディアは「新議会の初日に起きた決まりの悪い方針展開」(米紙ニューヨーク・タイムズ)などと報じており、今後もトランプ氏と共和党とのズレが浮き彫りになる場面が出てくる可能性もありそうだ。