岐路に立つ自由貿易、日本にも波及か TPPよりNAFTAの影響懸念
トランプ米大統領は雇用創出に向け、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉といった通商戦略の大転換を柱とした経済政策を打ち出した。保護主義を前面に押し出した内容で、米国がこれまで主導してきた自由貿易体制が今後修正を迫られるのは必至。自由貿易を軸に戦後発展してきた世界経済は岐路に立つ。日本経済も身構える必要がある。
製造業を復活
「工場は次々と閉鎖し国外へ移転していったが、それは過去のことだ」。トランプ氏は20日の就任演説で、行き過ぎた貿易自由化に歯止めをかけ、製造業を復活させると宣言した。直後に公表した基本政策には「10年間で2500万人の雇用をつくる」と明記した。
物品貿易による2015年の米国の赤字は7625億ドル(約87兆円)。リーマン・ショック翌年の09年に比べ約50%増えた。景気回復で輸入が増えたことも赤字の背景にあるが、トランプ氏はそうは捉えていない。
大統領選で「貿易自由化が企業の海外移転を招き、輸入と失業者を増やした」と訴え、出した答えが、米国の利益を第一に考える内向き政策だ。
国際社会は保護主義の台頭が第二次大戦につながった苦い歴史を背負う。1930年代、各国は世界大恐慌を自国産業の保護で乗り越えようとし、米国では政府の調達物資を米国製に限定する「バイ・アメリカン法」が成立した。就任演説で「米国製品を買おう」と呼び掛けたトランプ氏が、戦前の悪法を念頭に置いていた可能性は否定できない。
TPP離脱とNAFTA再交渉も外国製品の輸入増を食い止めるのが狙い。ただ、TPPの漂流よりも、関税がかからないNAFTAの再交渉の方が日本経済への影響は大きそうだ。NAFTAは米国がメキシコ、カナダと結ぶ協定で、日本の自動車メーカーにとって人件費の安いメキシコは北米向け輸出の生産拠点になっているためだ。
トランプ政権は「カナダとメキシコが公正な取引に応じない場合、協定から離脱する」と言明した。日系自動車メーカーの幹部は「関税が復活すれば、生産体制を見直す可能性がある」と話す。自動車の部品は米国から調達する例も多く、米シンクタンクは「離脱の場合、米国で少なくとも3万1000人の雇用が失われる恐れがある」と試算する。
トランプ氏は税制や為替政策も総動員する方針だ。今月11日の記者会見で、海外への移転企業には高い税金を課すと表明。身内の共和党は、米国からの輸出で得た利益には法人税がかからないが、輸入企業の納税額は増える案を用意した。
為替政策協調も
為替政策では、米国との貿易で巨額の黒字を稼ぐ中国と日本が標的になり得る。トランプ氏は「われわれの通貨は強過ぎる」とドル高を牽制(けんせい)した。財務長官に指名されたムニューチン氏は、中国が人民元の安値誘導に動けば報復措置の発動もある「為替操作国」への指定をトランプ氏に提言するとしている。
米国内で保護主義がさらに高まるのを避けるため、米ピーターソン国際経済研究所のバーグステン名誉所長は「中国を含む主要国が為替政策の協調に動こうとする可能性はある」とみている。(ワシントン 共同)
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