日本貿易振興機構(ジェトロ)メキシコ事務所長・峯村直志氏 「NAFTA脱退で損するのは米国」
米新政権がメキシコから輸入する製品に関税を課す動きについては楽観ができない。トランプ米大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)の早期再交渉を決めたが、仮にNAFTAを脱退するとなると損をするのは米国だ。
世界貿易機関(WTO)の枠組み下で認められる先進国・米国の自動車関税の上限は2・5%だが、新興国・メキシコのそれは50%だ。米国の輸出先は金額ベースでカナダに次ぎ2位がメキシコで、大きく依存している。輸出企業約5万9千社のうち、6割が中小企業だけにNAFTAによる関税の減免がなくなり、WTOの枠内でメキシコの関税が引き上げられる事態となれば、影響は大きい。
メキシコは46カ国と自由貿易協定(FTA)を結ぶFTA大国。現在、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で交渉してきたアジア各国と2国間協定を早期に結ぶ準備を進めている。となると、例えばオーストラリアなどから無税で牛肉や乳製品が輸入できるようになり、その結果、米国の畜産加工会社が商機を失うことになる。
メキシコ企業の多くが米国企業の現地法人と考えると米国対メキシコの対立構図にはしづらい。一方で、メキシコ政府にとってNAFTA脱退は最後の交渉カードで、一方的に攻められる交渉ではない。付属文書を合わせ1200ページにも及ぶ協定の見直しは容易ではない。議会承認も必要で交渉は長引くだろう。
日系企業の新規投資は昨年後半から様子見のムードだ。ただ、企業のメキシコ投資への関心は引き続き高く相談件数は増えている。ここ数年の間に進出した中小部品メーカーは4~5年先の長期をにらんだ投資だけに簡単には撤退できない。現地では部品メーカーが圧倒的に足りない。トヨタ自動車の新工場などを見据え、部品メーカーへの進出期待は高く、最近も数社が法人登記の手続きを粛々と進めている。
2016年のメキシコの自動車生産347万台のうち、米国への輸出は約86%。米国メーカーは9割以上が米国向けだが、マツダは米国向けが5割弱、日産自動車は8割、ホンダも8割弱となっており、他国への輸出を模索する動きもある。(談)
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