記事は、この退避勧告の決め手となった、4号機の燃料貯蔵プール内に水があるかどうかの見極めについて、NRCの判断が二転三転した様子を詳述。爆発が起きず建屋が残っていた2号機に上空から水を投下するため、携行式対戦車ロケット弾(RPG)で天井を吹き飛ばす案を検討していたことも明らかにした。
その上で、当時の委員の言葉を引き、危機に際して「取るべき正しい態度は、最悪の事態を想定し、最良の事態への希望を捨てないことだ」と述べている。(田中靖人)
ニューヨーク・タイムズ(米国)~不信の連鎖、米国の懸念裏付け
「壊れた原子炉をめぐる混沌の中、(当事者の)信頼は欠如し、狂乱めいた電話のやりとりが続いた」
2月28日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、民間の有識者でつくる「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」の調査報告書を紹介する記事で、事故当時の菅直人政権の対応の混乱ぶりを強調した。
記事は、事故の最も深刻な初期段階で、「日本のリーダーたちは、原発が実際にどれだけのダメージを受けているか把握しておらず、あまつさえ国民へのリスクを軽視しようとさえした」と厳しく批判する。
「主要な登場人物たちの間の信頼の崩壊が、いかに日本の当局者の(適切な)反応を妨げたかを報告書は物語っている」とし、菅氏と東電の首脳陣、そして福島第1原発の責任者の相互不信を問題視。関係者の対立が、危機の初期段階で、「ときに矛盾した情報の氾濫による混乱を生み出した」と指摘した。