安倍晋三首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を正式表明したことで、経済再生策「アベノミクス」は新たな試練に直面する。実際の交渉参加までには、米国との事前協議で、自動車や保険分野の市場開放を迫られる。交渉入り後も農産品の関税を「聖域」とする日本に対して参加国の風当たりは厳しく、国益確保に向けたハードルは高い。
「TPPを日本経済の成長につなげられるかどうか。これからが正念場だ」。経済産業省幹部は参加表明についてこう述べ、表情を引き締めた。
日本は今後、交渉入りの条件である参加国の承認取り付けを急ぐ。米国やオーストラリア、ニュージーランドが未承認で、なかでも米国は事前協議では米国内の自動車や保険業界からの圧力を背景に日本市場の閉鎖性を厳しく批判してきた。
このため自動車では米国の乗用車の関税撤廃に対し、一定の猶予を認める方向だ。米韓自由貿易協定(FTA)では米国が自動車関税を5~10年維持することを韓国が認めた。