日米はそれを超える猶予期間を検討しているが、米国市場での関税撤廃は日本の最大のメリットとみられるだけに、どれだけ期間を抑えられるかが課題になる。
保険でも、政府出資の残る日本郵政傘下のかんぽ生命保険が「暗黙の政府保証」を基に低コストで資金を調達しているとして、米国は「競争条件を対等にすべきだ」と主張。
かんぽ生命は、米国勢が得意とするがん保険に当面参入しないなどの配慮を見せるが、米国側は依然として「懸案事項が残る」としており、解決策は見えていない。
これらの課題を乗り越え、日本が交渉の席についたとしても、参加11カ国との難しい駆け引きが待っている。日本は鉱工業製品の関税撤廃で輸出増を目指すが、コメなど重要5分野を聖域として関税維持を狙う。ただ、酪農国のニュージーランドやオーストラリアは関税撤廃の急先鋒(せんぽう)で、日本の聖域がどこまで認められるかは不透明だ。
通商交渉は「各国が守りたい市場でも開放しあった上で、そこからどれだけメリットを上積みできるかの勝負だ」(政府関係者)。安倍首相が強調する「国益」の確保に向けた覚悟が問われることになる。