退任の記者会見をする日銀の白川方明氏【拡大】
議長は3月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で「金融政策は切れ味の悪い鈍器のようなものだ」と語り、早期に引き締め姿勢に転じるリスクを強調した。
議長が日銀を反面教師に緩和政策を進めているのは有名だが、この発言が、引き締めを急いでバブルを崩壊させたり、回復の芽を摘んだりした過去の日銀の過ちを引き合いに、自らの緩和政策を正当化したものであるのは明らかだ。
ただFRBにも、グリーンスパン前議長時代に住宅バブルを見抜けず、後のリーマン・ショックを招いたという苦い過去がある。このように、日米ともに金融の専門家集団であるはずの中銀はあまりにも無力だ。
これに加え、現在日米の中銀が供給し続けている資金は未曽有の規模。将来的に物価が急上昇に転じるなど経済が変調を来しても過去の経験則は生かすべくもない。アベノミクスは政治的に大成功を収めつつあるが、金融政策に関する限り、先行きを楽観しすぎるのは禁物だ。(編集委員 佐藤健二)