【世界鳥瞰】
9月の第1週、残暑の東京から韓国・仁川空港経由でロシア沿海州の中心都市、ウラジオストクに降り立った。そこは既に肌寒く、季節が2カ月ほど先に進んだような印象を受けた。広大な領土を持つロシアは、モスクワとウラジオストクの間で7時間もの時差がある。シベリア鉄道の東の終着駅であるウラジオストク駅の大時計の針はモスクワ時間を示していた。
ウラジオストクはかつて不凍港を目指して東進したロシア帝国が築いた町であり、街並みはヨーロッパ風だ。ロシア正教の教会の建物はサンクトペテルブルクを髣髴(ほうふつ)させる風情がある。ロシア語で「東方を征服せよ」という意味を持つこの都市は、旧ソ連時代から今日(こんにち)に至るまで一貫してロシア極東艦隊の戦略拠点であったが、その一方で、軍事上の機密のためか商業の発展は制約を受けてきた。
バイカル湖以東の東シベリアから沿海州にかけての広大な地域は地下に原油、天然ガスなどのエネルギー資源や鉱物資源が埋蔵されており、ロシアにとって重要な資源の供給源である。