不毛な荒地の中を走る一本の街道沿いに突如現れた商業施設群。その不釣合いな佇まいには違和感を禁じえないが、週末ともなると遠方から多くのタイ人客が集まり、ごった返す。買い物にいそしむ人、土地取引の下見に来る人。ゴールドラッシュにも似た表情と言えるだろう。商業施設が建つタイ西部のカンチャナブリ県は、かつては製糖を中心とした農業県だった。ところが、今、始まったばかりの不動産好景気に沸いている。
首都バンコクから西に200キロ。民主化の始まったミャンマーとの国境を目指す途上に、その商業施設群はある。百貨店ロビンソンを基幹店に、地場スーパー、タイ資本の日本食レストラン、書店など「ここに来れば何でもそろう」と子連れで買い物に訪れた自営業者は話す。周辺一帯は道路網が整備され、県内の自宅からは車で30分ほどで来られるようになった。
商業施設がオープンしたのは今年2月。建設地とその周辺は数年前まで粗末な民家の点在する荒地に過ぎなかった。ところが、3年ほど前から突如、道路が新設・拡張され、土地の取引も活発となった。地元の不動産事情に詳しい在タイ資産運用日本人コンサルタントの佐々木扶美さんによると、5年前まで1ライ(タイの土地面積単位=1600平方メートル)当たり50万バーツ(約158万円=当時)に過ぎなかった荒地が2年後には2倍に。2012年末には7倍にまで高騰し、現在は700万バーツ(約2200万円)ほどで取り引きされているという。5年間で14倍になった計算だ。