政府はTPP交渉で、従来の外務省、経済産業省、農林水産省などが交渉団を構成する方針を転換。内閣官房に意思決定を一元化し、縦割りによる省益重視の排除を図ってきた。
その中で甘利氏がトップとして各省庁の調整を一手に担ってきただけに、大詰めの局面で国益をかけた判断を下せるのは「甘利氏以外にいない」(政府関係者)のが実情だ。
このため政府内ではシンガポール会合で、「米国などとの関税協議に決着がつかなくなるのでは」との見方もある。関税協議が先送りされれば、12カ国が目指す実質合意も部分的にとどまる公算が大きい。「米国とアジアの橋渡し役」を自任する甘利氏の不在は、米国と新興国が対立する知的財産などの協議にも影を落とす恐れがあり、交渉全体の痛手となりそうだ。